今月10日に亡くなった渡哲也さん(享年78)。実際に取材したのは数えるほどだが、オーラと優しさが同居していることは、短い取材でも十分に感じることができた。

報道陣に公に応じた最後の取材となった3年前のCM撮影現場。渡さんが集中して臨めるようにと、現場は張り詰めた空気だった。撮影が一段落し、渡さんとの質疑応答になったが、空気はピンと張ったままだった。

そこで記者たちに大きな声で「それでは、お待たせしました!」と言ったのは渡さんだった。いっぺんに空気がやわらいだ。質問を促す渡さんの表情は柔らかかった。

共演する吉永小百合にシャイなところがチャーミング、と言われ「いやあ、どうしましょう」と笑った顔もまさにチャーミングだった。

CMの話は流ちょうに受け答えていたが、石原裕次郎さんのことを聞かれると何秒か押し黙った。「いつまでたっても裕次郎さんの話になるとさみしい。亡くなられたの52歳ですからね」と、声を絞り出した。

「自分は病人のイメージですから、CMはそろそろ…といつも言ってます」「映画の最後の一本は吉永小百合さんと。大ラブシーンのあるものを」など、率直に、笑いも交えながら応じてくれたことを思い出す。

どんな短い取材でも、きっとこの人は人柄そのままなんだろう、と感じることができた人だった。