タレントの磯山さやか(36)が10月、デビュー20年を迎える。30代半ばを過ぎた今も、現役のグラビアアイドルを名乗り、ドラマ、バラエティーにと、ますます活躍の幅を広げている。近年は、動物愛護の問題に声を上げ、社会派の一面を見せる一方、「フワちゃん」物まねで芸域を広げ、コメディエンヌとしても演芸通をうならせる。大きな胸が恥ずかしくて、学校のプールに入れなかった少女が、たくましく駆け抜けた芸能界の20年。今まで、そしてこれからを聞いた。【取材・構成=秋山惣一郎】

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-芸能生活20年、おめでとうございます

磯山 おかげさまで。初めは3年ぐらいで辞めようかな、もう続かないだろうな、なんて思ってたんです。あまり前へ出るタイプじゃないから、芸能界に向いてない性格で。それがここまでやってこれたのは、奇跡的ですよね。

-デビューは17歳、少年誌のグラビアでした

磯山 当時、高校2年生で、野球部のマネジャーをしていました。帰宅部の友達は、ギャルメークにルーズ(ソックス)はいて、楽しそうに遊んでる。なのに私は、練習や合宿の手伝いで、休みもほとんどない。部員さんにはテーピングの巻き方が悪いとか、スポーツドリンクが濃いとか、理不尽なことで怒られる。遊びたい、ここから抜け出したいとばかり思ってました。で、東京へ遊びにいく感覚で、事務所のオーディションを受けたんです。もちろん野球部の監督にはナイショです。

-グラビアについて周囲の反応はどうでしたか

磯山 小学校6年ぐらいから胸が大きくなり始めて、学校のプールにも入りたくなかった。それが、水着でグラビアだなんて、考えられない。本当に恥ずかしかったです。男子には何も言われませんでした。でも雑誌は、部室や教室に置いてある。私も恥ずかしかったけど、身近な女子の水着姿に、みんなも恥ずかしかったのかもしれませんね。他校の男子からは「あ、磯山だ」とか「あの子だよ」とか言われましたけど。

-でもグラビアは続けようと

磯山 将来は子供に関わる仕事がしたいと思って、保育士とか児童福祉司の資格を取れる大学への進学を考えていました。でも部活は忙しいし、グラビアの仕事も海外ロケが月に何度もあった。野球部のマネジャーは卒業まで続けましたが、勉強が追いつかなくて、進学は諦めました。当初はバイト感覚だったけど、撮影は楽しいし、読者に喜んでもらえると自信もついて、この仕事を続けたい、と思うようになりましたね。

-ずいぶんグラビアを研究したそうですね

磯山 同業者のポージングや表情の作り方、水着、シチュエーションなどを勉強しましたね。どうすればファンが喜ぶか、細かいところまで考えるのが楽しくて。ファッション誌は洋服や小物がメインだけど、グラビアは私が主役。自分を表現できる。読者は100%、男性を想定しています。男性を楽しませるため、という意識はデビュー当時から変わりません。

-今日は愛犬も一緒です

磯山 リリーっていいます。7歳のメスです。30歳になった時、これまでは周りの人のお世話になって生きてきたんで、何かに責任を負わなきゃいけないと思ってた。そこで、この子と出会った。私と誕生日が同じで運命を感じたんです。

-近ごろは、動物愛護の活動にも熱心ですね

磯山 この子を飼って、世の中には不幸なペット、動物がたくさんいることを知りました。ペットがどういう環境で生まれ、売れ残るとどうなるか、あまり知られていない。遺棄、虐待など問題はたくさんあります。かわいい動物の悲惨な実態、現状は見たくないかもしれないけど、問題をもっと多くの人に知って欲しい。私は、こういう仕事をしているので、きっかけにはなるかな、と思って発信しています。

-一方、ユーチューバー芸人「フワちゃん」の物まねのクオリティーが評判です

磯山 ラジオ番組で放送作家の高田文夫先生からムチャぶりされて、勢いでやったら、何となく今、イケてる状況で。でも、これが20代だったら無理でした。亡くなった志村けんさんのコント番組や舞台に呼ばれて、鍛えられましたね。何か振られたら「無理です」「できません」じゃなくて、ダメでもいいから、何か反応する、返す。やってみれば、自分のできることが分かってくる。高田先生と志村さんに教わりました。「とにかくやってみる」の勇気が、今の私を強くしてくれました。

-これからの目標は

磯山 今、36歳という年齢と20年という芸歴が、ほどよいベテラン感を醸して、かみ合っていると思います。第7世代の芸人さんと共演すると、お姉さんの気持ちになっちゃいます。若いころなら、私も張り合ったかもしれませんが、かわいいな、がんばれ、と思います。ドラマでのお母さん役も増えてきて、そういう年齢になったんだな、と。私は茨城弁がつい出ちゃうし、芸能人らしいキラキラもないので、これからも無理なく自然体で続けていきたいです。

◆磯山(いそやま)さやか 1983年(昭58)10月23日、茨城県生まれ。高校在学中にグラビアアイドルとしてデビュー。高校野球の女子マネジャー経験を持ち「野球通」として知られる。ほかにバラエティーやドラマなど幅広く活躍。故郷・茨城県の「いばらき大使」を務める。故志村けんさんの舞台「志村魂」には10年から出演を続けた。現在、特撮ドラマ「ポリス×戦士 ラブパトリーナ」(テレビ東京系)、ラジオ「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送)などに出演中。