映画「スパイの妻」(10月16日公開)で世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭(イタリア)コンペティション部門で銀獅子賞(監督賞)を受賞した、黒沢清監督(65)が13日、オンライン会議システム「Zoom」を通じて日本の報道各社の取材に応じた。

黒沢監督は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で現地への渡航がかなわない中での受賞に「現地に行っていないものですから、観客の手応え、ジャーナリズムの論調は全く分からない。何が受けたんでしょうかね? ピンときていないのが正直なところ」と笑った。

現地で作品を見た観客が「このような日本映画が撮られているのは全然、知らなかった。非常に驚いた」とコメントしたのを、伝え聞いたと明かした。その上で「僕は、そこから推測するだけですけど、興味深くベネチアで見られた。理由は2つ。1つは戦争状態にある日本の物語を中心に、冷静に設定した日本映画、その上でサスペンス、メロドラマの上に物語がくみ上げられている。そういう日本映画は見たことがないのだろうと思う」と分析。そして「撮っていて、海外ではあっても日本ではないよねと…それが伝わったのかなと思う」と笑みを浮かべた。

受賞の第一報を聞いた時の感想を聞かれると「うれしかった。ラッキーだな。ベネチアのコンペに選ばれただけで幸運は使い果たしたと思ったが、少し残っていた」と、ジョークを交えて感想を語った。その上で「海外の映画祭は経験していますけど、選ばれるのはうれしいこと。その(映画祭側が選んだ)時点で評価しているのは分かる。そこから賞となると時の運。作品は拮抗(きっこう)している。比較して審査員の反応がどうなのかは時の運。最後まで運が味方してくれたなぁというのが、一報を聞いた実感」と本音を語った。

取材会の時点で、劇中で夫婦を演じた主演の蒼井優(35)と共演の高橋一生(39)とは、話が出来ていないという。黒沢監督は「俳優とは話していません。メールは、たくさん来ていますが、こちらから誰かに何も出していない。これからですね。明日以降、俳優、スタッフ達と喜びを分かち合う、楽しい時間が待っているんだろうと思う」と笑みを浮かべた。