札幌・ススキノのナイトクラブなどに拠点に置くミュージシャンが歌う応援ソング「SUSUKINO BEAT」(ススキノビート)がこのほど完成し、10月21日に全国発売される。9店13人で結成した「ススキノオールスターズ」は、新型コロナウイルスの影響で苦しむススキノの飲食店などと協力して、楽曲とミュージックビデオ(MV)を作成。希望と祈りを込めたチャリティーソングで街の活気を取り戻す。

   ◇   ◇   ◇

ススキノのミュージシャンが集結して制作された楽曲「SUSUKINO BEAT」。MVの終わりには「ススキノで働く全ての人に捧げます」と記された。プロデュースしたナイトイン21世紀のボーカルNORI(56)は「勇気づけるだけじゃなくて現状を知って欲しい。背中を押せる曲にしたかった」と語る。

コロナ禍でススキノの夜は一変した。歓楽街から人が消え、飲食店やライブハウスも相次いで閉店。老舗のナイトイン21世紀も北海道独自の緊急事態宣言があった2月28日から約3カ月間、営業を休止。「以前と同じようにお客さまにぜひ来てくださいと言うことができない」とNORI。入店時の検温と氏名、住所の記入、10台以上の加湿器の設置など対策をして営業再開はしたが、客足は戻らない。

ライブハウスや路上でプロアマ問わず音楽があふれるススキノ。細川たかしやサカナクション山口一郎ら多くの音楽家がこの地で育った。今楽曲はススキノで歌い続ける思いが込められたが、歌詞は応援ソングと銘打つほどに明るくはない。「<歌詞>全てのビートを叶えることは出来ないけれど」。製作総指揮の長谷川雅弘氏(55)とともに作詞したNORIは「最初に書いた詞は全く違うもの」。制作開始は3月。コロナの感染拡大とともに詞を何度も書き換え、別に作られた曲と擦り合わせた。感染リスクを避けるためにリモートで曲作りが進められ、9店舗13人のミュージシャンが集まったレコーディングまでには約4カ月かかった。

18日開幕のゆうばり国際ファンタスティック映画祭でも公開されるMVではススキノで営業する31店の飲食店なども無償で協力した。そのMVでもアーティストはモノクロに映し出される。NORIは言う。「皆さんが持つ危険な場所のイメージをそのままにした。でも一番最後のシーンだけカラーになる。それが一筋の光です」。だからこそ歌詞の最後は祈りを込めてつづった。「<歌詞>新しい夜明けのメロディー 生まれてくるまで」と。【浅水友輝】

◆SUSUKINO BEAT 表題曲のオリジナルカラオケ版、インストゥルメンタル版などを収めた4曲入りCDと、同楽曲の趣旨に賛同した31店舗の飲食店などが参加したショートムービー形式のMVのDVDのセット。楽曲中で繰り返される「SUSUKINO」のフレーズを「地名、社名、店名、個人名に換えて歌って欲しい」とNORI。価格は2000円(税込み)。ネットショップ(https://susukino.shop/)や賛同店舗で予約受け付け中で、10月21日からは全国のタワーレコードなどで販売予定。楽曲の収益はプロジェクト参加店舗で分配される。

◆コロナ禍で生まれた音楽 人気ロックバンド「RADWIMPS」は3月に「Light The Light」を発表。人気フォークデュオ「ゆず」は5月に「そのときには」をデジタルリリースした。北海道内でも3人組バンド「HAMBURGER BOYS(ハンバーガーボーイズ)」がコロナ禍で減る生乳の需要喚起を目的とする「#牛乳チャレンジ」のために楽曲「おいしい牛乳」を4月にYouTubeで発表し、再生数は11万回を超えている。

◆ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での放映日程 30回目となる今年の映画祭は動画配信サービス「Hulu」で18~22日にかけて初のオンラインで開催される。「SUSUKINO BEAT」(9分)は18日午後11時、19日午後6時、20日午後8時10分、21日午後8時40分、22日午後6時から放映予定。