歌舞伎俳優松本幸四郎(47)が先日、日本記者クラブで、「歌舞伎はいま」と題した会見を行い、コロナ禍で感じた思いや、新しい上演の試みについて語った。

幸四郎はZoomを使った生配信歌舞伎「図夢歌舞伎」を6月の下旬から開始した。史上初のオンライン歌舞伎の誕生だった。

予定していた公演が次々に中止になり、「次に予定している何かがある、という環境ではなくなった。そういう経験をしたのが何十年かぶりで、何をしてよいのか分からず、あっという間に1カ月が過ぎました」という言葉から、幸四郎がいかにぼうぜんとしていたかが分かった。

役者は舞台がなければ何もできないのか、いやそうじゃない、と自問自答の末、発案し実現したのが「図夢歌舞伎」だ。生配信だけでなく、収録した映像を組み合わせ、見ごたえのある配信になった。

反響も大きく、幸四郎は「劇場が以前のように上演される時が来ても、存在しえるものでありたい。生の舞台と配信公演は両立できる」と話した。

現段階では、配信での演じ方は舞台と同じような声量や演技をしているという。今後は、映像用の歌舞伎として演出や演技も変えていくことを考えているという。配信ならではの楽しみが増えるのなら、ますます見てみたい。

定員を半数以下に抑えながら8月から歌舞伎座での公演が再開した。幸四郎は8月に続き、現在上演中の「九月大歌舞伎」にも出演中だ。もがきながら、楽しみながら歌舞伎に向き合う幸四郎が、次に何を見せてくれるのかは本当に楽しみだ。