脳科学者の茂木健一郎氏(57)が、東京・池袋の都道で昨年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)が「アクセルを踏み続けたことはない。車に何らかの異常が生じたから」と起訴内容を否認し、無罪を主張したことに、「強い違和感を抱かずにはいられません」との思いをつづった。

茂木氏は9日、ブログを更新し、「池袋の暴走事故、亡くなった方やご遺族の方のことをおもうと、本当につらく、あってはならない事故だったと改めて思います。加害者になられた飯塚幸三さんに対して、『上級国民』であるとか、そういうイメージに基づいてあれこれ言うのはどうかと思いますし、ましてや飯塚さんのご家族や関係の方にいろいろ言うのはよくないと感じます」と言及した。

その上で、前日に東京地裁で開かれた初公判での飯塚被告の主張に、「今回、飯塚さんが裁判で自動車の不具合を主張されたことには強い違和感を抱かずにはいられません」とし、その理由について「飯塚さんご自身は卓越したエンジニアであり、長年、定量的、システム的な視点からさまざまな研究、開発をされてきたものと思います。そのようなご自身の経験からして、このような事故が、人間側の思い込みや勘違いといったヒューマンエラーに基づくものなのか、それとも自動車の誤動作によるものなのか、その蓋然性はご判断できるのではないでしょうか」とした。

続けて「もちろん、あらゆる可能性は否定できるものではありません」とした上で、「むしろ、飯塚さんが、ご自身が引き起こされた今回の事故において、人間の思い込みや認知エラーの起こりやすさ、その恐ろしさを顧みられて、それを制御、抑止するための技術的解決(周囲の状況のデータを収集した上での自動停止装置や、自動運転など)の大切さに思い至られて、その必要性を反省を込めて主張されたらよかったのにと思わずにはいられません。残念です」と茂木氏。「改めて、亡くなった方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の方への心からのご同情、哀悼の意をいだきます」とした。