さいたま市にある劇団「ミュージカル座」で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生した。稽古の段階で、関連を含めて72人もの感染者を出し、10月20日に初日を予定したミュージカル「ひめゆり」も中止に追い込まれた。

劇団の報告によると、6日夜に出演者の1人から、他の現場で陽性者との濃厚接触の疑いがあるため、PCR検査を受けるとの連絡があった。翌7日昼すぎに陽性との報告があり、稽古を中止し、8日には稽古出席者全員にPCR検査を受けるように指示したという、10日に公演中止を決めるとともに、保健所から「4日と6日に集団感染が発生した可能性が高い」との報告を受けたという。

稽古は2カ所のスタジオで行い、マスク着用で、1時間ごとに10分以上の換気を実施。「密」を避けるために舞台上の出演者は32人までに調整し、演出でも顔と顔が向き合わないようにしたという。しかし、そうした感染防止策にもかかわらず、10代から60代まで計72人という感染者を出してしまった。

ミュージカル座はオリジナルミュージカルの創作を目指して95年に創立し、今回中止となった「ひめゆり」は96年の初演から再演を繰り返した代表作。かつては神田沙也加が出演したこともあり、今回も元劇団四季の樋口麻美が出演予定だった。

ミュージカル座はコロナ禍で公演中止が相次ぎ、4月にクラウドファンディングを行い、6月までに約1300万円の支援金が集まったという。コロナ禍で劇団の財政状況が厳しくなった上に、クラスター発生は劇団存続にも影響を及ぼす可能性がありそうだ。【林尚之】