フリーアナウンサー古舘伊知郎(65)が、6年ぶりの「古舘伊知郎トーキングブルース-やっかいな生き物-」を12月4、5日に東京・恵比寿ザ・ガーデンルームで開催することが27日、分かった。観客の数を50%に絞り、新型コロナウイルス対策を万全にした上で“古舘節”を響かせる。この日、都内で取材に応じた古舘は熱い思いを口にした。

古舘がマイクを手に2時間しゃべりっぱなしのトーキングブルースは、88年から03年にかけて毎年開催。14年の一夜限りの復活を経て、今夏に6年ぶりに開催の予定だったが、新型コロナウイルス禍で8月14日に初の無観客ライブ配信の形式で開催された。

夏の無観客ライブ配信を振り返った古舘は「ひと言で言うと悔しかった。当たり前だけど、ライブはお客さんが主役。舞台上はお客さんに支配される。予想できたが、実体験してみると、しゃべりが空回りしてしまった。ここで、お客さんのため息、ニコニコした笑顔といった感じで、いいメリハリが自然と身体から出てくるのに。1人でキャッチボールするのは矛盾している。壁打ちですらなかった。ライブ配信でカメラさんもいなかった。暗い奥に音声の影が見えるくらいで、森の中でやっているような感じでした。同時配信を見てくれた方には申し訳ないが、それも(有観客を)見るインセンティブ(誘因)になりますので」と振り返った。

「当たり前の幸せの日常を感じた。お客さんが来てくれるのが前提で、満員になるのかな、空いてるところがあるかなとやっていた。それが、1人もお客さんがいない。スタッフすらも別室にいる。当たり前の日常が、本当に必要だと思った。今回は、尋常じゃないくらいに、お客さんに気を使いますよ」と話した。

マイクを手に世の中を言葉で揺さぶり、打っていく「トーキングブルース」。今回のサブタイトルは「やっかいな生き物」だ。

「今回は、ちょっとベクトルを変えて行こうかと思っています。今までは世の中の『なんなんだ、これは!』というタッチ。それが私も、いい年になって『一日一生』だと思って、仕事をやりたい。その瞬間、瞬間を頑張りたい。他人のことをからかったり、打つ前に、自分の中にも何かがあるはずだと。世の中には偏見とか、差別だとか決めつけがある。それを含めて、やっかいな俺。根本は、そう思っちゃった、俺。主語を自分にしないと、お客さんの共感を得られないと思った。SNSで攻め込まれる時代に、みんな自分を主語にしたくない、攻められたくないと思っている。矛盾するようだけど、今がよければいいとなっている。地球温暖化、感染症、食料危機、地震、先が分からないから、今がよければいい。あんまり攻められたくない、嫌なことを考えたくないと、みんな思っている。ならば、打つなら自分のことだと。自分を棚に上げないでね。と、これだけしゃべる私も、どうかと思う。『やっかいなのは自分だよ』」と笑った。

65歳。アラ還を超えて、アラ古希となって新たな挑戦をする。

「無観客の緊張感がすごかった。今までのトークライブでは、客席にいるお客さんのノイズとかで気合が入った。無観客だと入れるタイミングがいつまでもない。緊張していない自分にあせりを感じて、あせりました。だから、結果的にいい経験をしたんじゃないかな。そこで、1時間半以上しゃべるのが、いい経験だった。前回は政治家のしゃべりのまねが好評だった。声帯模写ができないし、形態模写もできない。だから“文脈模写”だ。言葉選びをまねた話芸みたいなものをやってみようかなと思っています」

28日からオフィシャルサイトで先行受付を開始する。