マーシーことハードロックバンド「アースシェイカー」のボーカル西田昌史(61)が11月7日、ハードロックバンド「グランドスラム」のボーカルとして無観客配信ライブを行う。西田が28日、日刊スポーツの取材に応じ、同ライブへの思いとともにコロナ禍の音楽活動や音楽の大切さを訴えた。

グランドスラムは89年、元リアクション加藤純也(ボーカル)、元プレゼンス白田“ルディー”一秀(ギター)、44マグナム吉川“バン”裕規、元メイクアップ豊川義弘(ドラム)の4人で結成。97年2月に解散するが、14年11月、東京・代々木のライブハウス「ザーザズー」で白田と吉川による「グランドスラムナイト」を開催している。

マーシーと吉川は80年代、日本のハードロックシーンを共にけん引してきた。「バン(吉川)が44マグナムに入る前からの付き合いだから、もう長いです。今は北海道に住んでいて、僕がツアーで行くたびに何か一緒にやりたいねと言っていた」。

そんな会話が現実となり、白田を入れてのセッションを行った。「白田とはアースシェイカーがデビューする前からの付き合い」でローディーだった。「最初はお互いのバンドの曲をやっていたけど、グランドスラムの曲がめちゃくちゃかっこ良くて、僕からグランドスラムの曲をやろうと言った。それで去年に1度、グランドスラムとしてライブもやりました」。

今年3月、グランドスラムとして、再びライブの予定だった。「チケットも完売していた。グランドスラムのファンはすごいパワーを持っていて、歌っていて気持ちがいいんです」。だが、新型コロナウイルスの影響でライブは11月に延期。その11月になっても、満員でのライブはまだ出来ない状況だ。「チケットが完売していたけど、会場が半分以下では、ライブを楽しみにしてくれていた人が等しく楽しめない。それは僕らも望んでいない。だから、配信という形にした。今までファンに元気をもらってきたので、今度は僕らが元気を返す番です」。

ライブ会場となるザーザズーは、コロナの影響で廃業が決まっている。「グランドスラムにとっては縁が深い会場だけに残念。僕らが出来るのはこの会場でのライブをファンの心に焼き付けることしかない」と話した。

80年代日本のハードロックバンドは、みな“ライブ”バンドだった。お客さんとのコール&レスポンスでライブを作ってきた。だが、無観客配信はそれがない。「正直不安はあります。メンバーはずっとライブバンドとしてやってきたし、テレビ出演もあまり経験がない。お客さんの反応がないのはどうやったらいいのかがね」というが、「でもオッサンたちが頑張っている姿を見て、少しでも元気になってくれればうれしい」と笑った。

マーシーはここ数年、アースシェイカーの活動と平行して「出逢い歌」と称して、全国のライブハウスなどを精力的に回って来た。「今まで支えてくれたファンへの恩返しです。でも、コロナの影響でほぼ中止状態。アコースティックならということで、やっと少しずつですが、動き始めました」。

コロナウイルスはさまざまな分野に影響を与えているが、中でも音楽界は大きなダメージを受けている。「ライブができないことでライブハウスが廃業とかを聞くと、ライブハウスで育った身としてつらい。でも音楽は大切です。そんなつらい気持ちを吹き飛ばして前を向いたり、新たな1歩を踏み出すきっかけになったり、勇気を与えるような力を持っている。今まで何度もそんな経験をさせてもらったので、今度は僕らがみんなに元気を与えたい。そのためなら、配信でもなんでもやりますよ!」

今回のグランドスラムはマーシー、白田、吉川のほか、ドラムは元フラットバッカーの本間大嗣、キーボード清水賢治というメンバー。コロナ禍だからこその貴重な“配信”ライブになりそうだ。 【川田和博】