柳楽優弥(30)が9日、都内で最終日を迎えた東京国際映画祭のクロージング作品に選ばれた主演映画「HOKUSAI」(橋本一監督、21年5月公開)上映舞台あいさつに、ダブル主演の田中泯(75)とともに登壇した。

柳楽は、自身が演じた歴史的な浮世絵師・葛飾北斎の絵が、映画も大ヒット中の漫画「鬼滅の刃」の主人公竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が使う技「水の呼吸」にもつながっているという話を司会から聞いた。その上で「撮影する中で絶対に見つけたかったテーマが、北斎が波に感動する理由。何で、ここまでして書くのか、気になっていて。『鬼滅』までに響かせるのが…(すごい)」と語った。その上で「人生を諦めようとか、そういう覚悟でいった(絵に向き合った)んじゃないかと話したら、監督も、それで行きましょうと。それくらいの覚悟で向き合っていたと」と語った。

田中は「北斎の年を取ってからの役ということで、自分は、ご覧の通りの年齢なのでウソ偽りなく年齢を感じながらやらせて頂きました。本当に光栄。小さい頃から、北斎に触れることが多かった人生。演じる、この上ない幸せを感じる撮影の日々でした。撮影している時から好きな映画でした。ずいぶん、時間は経っているけれど…今も好きです」と北斎の老年期を演じた思いを語った。

その上で「見て頂くことで、北斎が絵を描いた理由が少し、伝わるんじゃないかと思います。ひょっとしたら、北斎が1番、待っていたんじゃないか…俺、こんな人間ですって。北斎が喜んでくれたら、みんな1番、うれしいですよね」と笑みを浮かべた。

構想に3年以上かけて企画、脚本を担当した河原れん氏は「北斎は江戸時代に90年も生きた。人生を、わずか2時間で描くのは不可能。いろいろなプロットを書いていく中で、たくさなる逸話を単純にまとめてしまったら、ただのダイジェスト映画で面白くない」と、構想の苦悩を語った。その上で「本当に何を書きたいか…となった時、北斎が描いた絵であると。絵を描いた時にどんな人と会って、次の作品がどんな風に変わったか考えて書いた。美しい不器用さが大好きで、北斎もきっとそういう人であったし、愚直に作り上げ、世に何かを伝えようとしていたんではないかと感じた」と作品に結実するに至ったこだわりを語った。

「HOKUSAI」は、「富嶽三十六景」など3万点以上の作品を描き残したといわれる北斎の知られざる生涯を描き、柳楽と田中が北斎の青年期と老年期を演じることで話題となった。撮影は19年に行われ、当初は5月29日に公開の予定が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて4月2日、公開が21年に延期と発表された。柳楽と田中のほか阿部寛、永山瑛太、玉木宏、瀧本美織らが出演する。