大九明子監督(52)が9日、都内で開幕した第33回東京国際映画祭で映画「私をくいとめて」(12月18日公開)が観客賞を受賞したことを受けて、主演ののん(27)とともにクロージングセレモニー後に開かれた会見に出席した。

同監督は会見の最後に、映画業界で昨今、問題視されているハラスメント問題について言及。映画のタイトルを引き合いに「武闘派なんていう言い方で、映画の現場で暴力が横行するということは絶対、食い止めなくては」と訴えた。

大九監督は「製作者の覚悟として」と口にした上で「映画館という場所は、私も子供の時から大好きな場所でした。すごく楽しく、安全な場所であるべきだと思います」と映画館を定義づけた。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が4月に緊急事態宣言を発動し、活動の自粛、休業要請がなされた際、存続の危機に立たされたミニシアターを支援するクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」などの動きがあった。大九監督は、そうした動きを踏まえ「ミニシアターに限らず、映画館全体を盛り上げていかなくちゃ、映画製作者が頑張って生き延びていかなくちゃと思っている」と映画業界の厳しい現状について触れた。

その上で「その中で、悲しいハラスメントがあることに目を背けてはいけないと思っています」と声を大にした。そして「映画が全ての人にとって、救いのものになるように、これからも頑張らなくっちゃ、と思っています」と語った。

映画業界におけるハラスメントの問題としては、映画の配給や映画館などの経営を行う「アップリンク」代表の浅井隆氏からハラスメントを受けたとして、元従業員が6月に東京地裁に同氏と同社に対して損害賠償などを請求する訴訟を起こした。10月30日に和解が成立したものの、原告側は「『円満』にも、そして『全ての問題が解決した』とも考えておりません」との声明を発表している。

また8月29日に休館した都内の映画館「ユジク阿佐ヶ谷」についても、元スタッフがツイッターでハラスメントがあったと発信。「やりがい搾取の犠牲となる人が繰り返し生み出されるという事態にならない為にも、私達が乗り越えられなかったハラスメントの一部を表明しておきたいという考えに至りました。現在ハラスメントに悩んでいる方が、自らの尊厳を守るため勇気を出して声を上げる手助けに少しでもなれることを願っています」などとつづっている。