歌舞伎俳優坂東玉三郎(70)が20日、京都市内で「坂東玉三郎 初春特別舞踊公演」(来年1月2~19日、大阪松竹座)の取材会を行った。12日に老衰のため88歳で亡くなった歌舞伎俳優で人間国宝の坂田藤十郎さんについて語った。

「子供の頃からご一緒させていただきました。関西の歌舞伎は個人個人の形を大事にされるので『こうしなさい』とはおっしゃいませんでした。『私はこうしたけれど、あなたなりのものを作りなさい』と、いつもおっしゃってくださいました」と、藤十郎さんとの思い出を振り返った。

藤十郎さんの最後の舞台は昨年12月、京都・南座「吉例顔見世興行」の「祇園祭礼信仰記 金閣寺」。玉三郎は「亡くなられたことは大変残念ですが、90歳近くまで現役でおられ、昨年の南座の顔見世にもご出演されたので、俳優としては大変お幸せな人生だったと思います」と語った。

自身の来年1月の大阪松竹座の舞台は「ソーシャルディスタンスをとった公演となります」と紹介。花道は使用しないが「その分、お客さまには安全をお届けできればと思います」。コロナ禍の時代に「せめて舞台だけでも華やかなものをお見せしたいです」と意気込んだ。

演目は「お年賀 口上」で幕を開ける。27年ぶりの上演となる「賤の小田巻」、18年に新作舞踊として披露され、今回で3回目の「傾城雪吉原」も上演する。

公演中は新型コロナウイルスの話は一切しないつもりだという。「そういったことをお客さまに忘れていただくことが何より大切。演劇というのは、苦しい現実を忘れさせてくれるものですので、せめて舞台を見ている時間だけはそういうものがない世界をお見せしたいです」と話した。