今年は、NHKの受信料についてのニュースがよく報じられています。

その発端は今年3月でした。NHKが翌4月から「NHKプラス」というネット配信を始めるにあたり、総務省がNHK受信料の負担を全世帯に拡大する方向での検討を始める、という一部メディアでの報道でした。

これは、現在はテレビを所有する世帯にだけ課せられる受信料を、テレビがなくても全世帯に課すというもの。なので、当然、反発の声の方が大きかったのは、当然のことです。ただ、ネットでも動画が流れる現在、今の制度の維持が正解なのかと聞かれれば、それは違うのではと答える人も多かったことでしょう。

そこで、総務省は、NHKのあり方を検討する有識者会議を立ち上げ、議論をスタートさせました。その議論の中でさまざまな意見が飛び出し、各メディアは、そのたびに受信料制度を報じてきました。そのため、今年は、受信料のニュースをみなさんが、よく目にしたのだと思います。

この会議では、さまざまなことが話し合われました。NHK側は、効率的な受信料の徴収のために、テレビ設置の届け出義務化や、未設置での届け出義務化、未契約者の名前を電気やガス会社などに照会できる制度などを要望しました。ただ、これらのことが報じられるたびに、批判の声が高まり、NHKが弁明、撤回していくというパターンが続きました。

最終的には、支払い義務化は見送られる方針のようです。NHKが求めていた各種要望も見送る代わりに、テレビを所有するのに、受信契約を結ばず不当に支払いを逃れている人には、割増金を課すことで、バランスを保つことになりそうです。

そもそも、受信料制度はなぜ、批判の声が多いのでしょうか。

それは、料金だと思います。今年10月から値下げされたとはいえ、1年間の料金は2万4185円(口座はらい、クレジット払い)にもなるのです。月々約2000円。NHKをみられなくても、2000円を払わなくていいのなら、そういう選択をする人もいるでしょう。ネットフリックスをはじめとした有料の動画サイトはたくさんあるわけですから。

そのために、NHKは報道のほかにも、紅白歌合戦や連続テレビ小説、大河ドラマなど、エンタメにも力を入れてきました。受信料のためというと語弊があるかもしれませんが、これらの番組が受信料の支払いを後押ししていることは否めないと思います。

それでも、これらの番組を、受信料を集める公共放送が作る必要は、これからもあるのでしょうか? エンタメ番組は民放や動画配信サイトに任せるというのも1つの選択肢かもしれません。公共放送が報道や教育番組に特化することで、受信料が例えば半額になるのだとしたら? スクランブル放送にして見たい人だけが見られる制度にしては? これからは、そういった議論が、有識者だけではなく、一般のお茶の間でも活発になることが期待されています。【竹村章】