東京・渋谷パルコで開催されている、詩人の最果タヒさんの詩の展示会「最果タヒ展」を取材した。

こんな仕事をしているのに、おはずかしい限りだが、タヒさんの詩集をこれまでに1度も手にとったことはない。ただ、石井裕也監督によって、タヒさんの詩集が映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」になったこともあり、詩人としては知っていた。石橋静河と池松壮亮が生きづらい都会で懸命に生きようとする若者を好演したこともあり、なんとなくだが、タヒさんの世界観は、おぼろげながらではあるが、知った気になっていた。

同映画は、タヒさんの第4詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」を実写化したものだ。

なぜ、芸能記者がタヒさんの展示会を取材したのかというと、タヒさんのファンである女優南果歩(56)による、トークショー&朗読イベント「夜のために在る6等星、観測日記」が開催されたから。

現地に行くまで、詩の展示会って何なのだろう、という疑問がぬぐえないでいた。なぜなら、展示されている詩をわざわざ見にいく人がどれほどいるのかと思ったからだ。

だが、そんな思いは杞憂(きゆう)だった。展示場の至るところに詩が展開されているのだが、その展開の仕方が、言葉で表現するのは難しいが、七夕の短冊のようなカードの表裏に詩がかかれ、風に揺れて、目に入ってくる。作品が読者に読まれることによって、初めて言葉に意味があると思うタヒさんの、詩になる直前の言葉を追い掛ける体験ができるという、ディレクションなのだという。百聞は一見にしかずとはよくいったもので、興味がある方は、ぜひ、訪れていただければと思う。

タヒさんは、画家のバンクシーのように、存在が謎の詩人だ。

トークショーを行った南も「ほんのひと言、日常で使う言葉にハッとさせられる。ぼんやり生きている人間にとっては刺激になっている」と絶賛していた。

渋谷パルコは今月20日まで。その後、名古屋パルコ(来年2月13日~28日)、大阪・心斎橋パルコ(3月5日~21日)でも開催される。 【竹村章】