2度目の緊急事態宣言で、芸能界の動きにもかなりブレーキがかかっている。そこで、すでに旧聞に属するかもしれないが、昨年末の「NHK紅白歌合戦」の話題である。

今回はコロナ禍ならではのリモート演出もあった。GReeeeNのAR(拡張現実)再現映像にはハッとさせられた。TikTokからブレークした初出場組もいた。一見「紅白」には執着がないようにも思える若手アーティストが、ここぞというパフォーマンスを披露した。

彼らは「出場決定」の一報を聞いた時、どんな反応をしたのだろうか。放送を見ながら、そんなことを考えていた。ひと昔前なら、労苦を重ねた演歌歌手が感激の涙を流す姿が想像できたが、彼らの場合はちょっとイメージしにくい。

年が明けて、その答えがいくつか明かされた。角川武蔵野ミュージアムからの中継で生の「高速歌唱」を披露したYOASOBIのパフォーマンスはヤマ場の1つだったと思うが、その2人が情報番組にリモート出演していた。2人はその瞬間をあっさりとした感じで明かした。「マネジャーからの報告がフワフワした感じだったので、実感がわかなかった」。そして「ちゃんとその瞬間を味わいたかったのに」と、さりげなく喜びを付け加えた。

同じTikTok組でも瑛人(23)は対照的だった。年明け放送のTBS系「情熱大陸」は、「紅白」をクライマックスに編集されていた。涙こそ見せなかったが、出場決定の報に大勢のスタッフが拍手で迎えるシーンや、真っ先に母親に電話報告するところもあって、「演歌歌手」に似たようにもみえる香りがあった。

毎年、複数組が出場するジャニーズはどうだろうか。実は昨年末にKing&Princeの高橋海人(21)とHey!Say!JUMPの薮宏太(30)に取材する機会があって、その瞬間のグループの様子を聞いている。

高橋によれば「控室でマネジャーさんから聞いた瞬間に全員部屋を駆け回りましたね。もうじっとしていられない感じでした」。

King&Princeはデビューしたその年から3年連続の出場。新鮮な喜びをそのまま維持していることと、決して「当たり前のこと」にはならない「紅白」の重みを感じさせるコメントだ。

藪の話は対照的だ。「決定を聞いた時は、メンバー全員がじっと喜びをかみしめる感じでしたね。僕らは(デビューから)だいぶたってからの出場でしたから」。

Hey!Say!JUMPはデビュー10年目で初出場。昨年末で4年連続となった。「じっと-」は、いまだにその10年間の道のりをかみしめる感覚なのかもしれない。

若手の「その瞬間」は多種多様。コロナ禍の今だからだろうか、合格発表のニュース映像のような、その喜びの瞬間の話に励まされる気がする。【相原斎】