宝塚歌劇団の月組トップ珠城(たまき)りょうが21日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演「桜嵐記(おうらんき)」「Dream Chaser」の千秋楽を迎えた。コロナ禍で数千人ファンに見送られるパレードは取りやめも、正装緑のはかま姿で最後の大階段を下り、あいさつ。同時退団のトップ娘役美園さくらとともに本拠地に別れを告げた。東京宝塚劇場は7月10日開幕。8月15日の同千秋楽をもって退く。

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コロナ禍で数千人に見送られるパレードは取りやめも、サヨナラショーはわかせた。珠城は、宝塚10代目トートを務めた「エリザベート-愛と死の輪舞-」から「闇が広がる」を披露。男役群舞のセンターに立った。そして、サングラスにたばこと、近年の宝塚では異例のショーとして話題を集めた「BADDY」を全員で歌い、締めた。退団会見では、ファンを思い号泣した珠城だったが、この日は涙ぐんだ程度で、ノリノリでフィニッシュした。

「男役10年」と言われる世界で、16年に入団9年目で早期就任。男役として恵まれた体形、武器の包容力を磨いてきた。最後の大階段あいさつは、「迷いなく選んだ」というタカラジェンヌの正装、緑のはかま姿だった。

「出演者全員がそろって今日という日が迎えられましたことを、心から幸せに思っております」

客席に向かったあいさつは、こう切り出した。トップ人生は「これまでさまざまな色濃い時間を経験してまいりました」と振り返り「喜びに心がおどったとき、幸せで涙があふれたとき、苦しくて前を向くのが怖かったとき、その経験のすべてが私を成長させてくださいました」と続けた。

男役を愛し続けた珠城にとって、宝塚大劇場への思いは格別だった。

「私は宝塚が大好きです。みなさまが大好きです。約14年間、男役として歩んでまいりました日々、最高に幸せでした」と、組の仲間、ファンに感謝した。

あいさつの冒頭が「本日は月組公演千秋楽をご観劇くださいましてありがとうございました」。あまりの“通常モード”で客席から笑いが起こり、カーテンコールでは「まさか最後のあいさつでお客様に笑われるとは…。ちょっとびっくりしましたが、これが私です」と言い、またわかせた。

ラストステージ、その最後は、珠城が「月組恒例の千秋楽ジャンプを行いたいと思います」と宣言。「月組バンザーイ」「この幸せな空間を目に焼き付けたい」と、笑顔を浮かべた。

次期トップに決まった月城かなとを呼び寄せ、珠城は「その(自身の退団)後は月城かなとが率いていきます。以後、お見知りおきを」。次期のバトンを託す場面もあった。

月城から花束を贈られ、ショーの後、臨んだ退団会見で、その際のやりとりを聞かれ「宇宙一かっこいいです」との言葉をもらったと報告。珠城は「お花を渡すときにひと言ちょうだいね」と頼んでいたといい、その答えがこれだったと明かしていた。【星名希実】