北川景子(34)が5日、都内の新宿ピカデリーで行われた、山田洋次監督(89)の新作映画「キネマの神様」(6日公開)公開記念舞台あいさつで、劇中で小津安二郎監督の1953年(昭28)の名作「東京物語」で原節子さんが出演する名シーンを、完全再現した場面を演じた際のプレッシャーと、自分らしさを出そうと挑戦した撮影の日々を振り返った。

北川は、松竹映画100周年記念作である同作で、スター女優の園子を演じるにあたり、日本映画史に残る名女優について学んだと明かした。「いろいろな作品を拝見したりとか、その時代の女優さんのヘアメークなどが特集された写真集を拝見したりとか、いろいろしたんですけど、何だか雲をつかむようで勉強しても、しても、なかなか近づけているような感じがしなくて」と苦戦したという。ただ「1番、役作りで助けていただいたなと思うのは、監督がこういう作品の時、女優さんがこうしていたよとか結構、撮影所時代のお話をしてくださったので、聞きながら1つ1つ、ピースを集めていった」と山田監督に感謝した。

その中でも「東京物語」の再現シーンは、重圧が大きかったという。「冷や汗…だって、あんな世界中にファンがいる映画の、あの有名なシーンのオマージュを自分がやる。原節子さんを超えることは、もう絶対に出来ないですけれど、なるべくお芝居も近づけてやりたいなと思いましたし…。まねするだけではなく、自分がキャスティングしていただいているんだから、自分らしい部分を、どこかに残せたらいいな」と振り返った。その一方で「いろいろ頭では考えるんですけど、じゃあ、どうしたらいいんだというのが分からなくて、パニックになって終わりました」と苦笑した。

山田監督は「カメラポジションも、エキストラの配置も、衣装も原節子さんのそのままを再現した。小津安二郎の映画を、そっくりまねようとした」と説明した。その上で「レンズのぞいたら不思議な感じ…ゾクゾクした。小津安二郎が近くにいる…カメラをのぞいた僕しか分からない感覚じゃないかな。小津さんとは話をしたことはないけれど、会った気がしましたね」と松竹映画の大先輩との“遭遇”を振り返った。

山田監督は「東京物語」など、小津監督の作品に出演し、自身の代表作「男はつらいよ」でも御前様役を演じた、笠智衆さんに聞いた、原節子さんのエピソードを披露した。

「北川さんに話したか分からないけれど…。笠智衆さんは、原さんと何度も共演されていて、どんな人ですか? と聞いたら『あまり、おしゃべりする人じゃなかった。顔の造作も体も大きくて日優に浮いてないんです』と真面目に仰ってた。原さんの『みっともない、女優に向いていない』というのが演技に出ていると想像していました」

北川は、この日、スケジュールの都合が付き、急きょ、登壇したが、山田監督の話を真剣に聞き入っていた。