望海風斗・真彩希帆、早霧せいな・咲妃みゆ-。互いに認め合い、高め合うトップコンビが続く雪組の新トップ彩風咲奈は、相手娘役に迎えた朝月希和に、寄り添うだけではなく「ともに走る」ことを求め、朝月も応えるよう努める。

兵庫・宝塚大劇場で始まった本拠地お披露目「CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」「Fire Fever!」では、朝月の持つ娘役の技量が彩風の魅力をより際立たせ、コンビとしても良質な関係性を日々、提示している。

朝月は研12での就任。「男役10年」と言われ、男役は一人前となるまでに10年間を要すると言われるが、娘役の場合は早期の就任も珍しくない。「花組と雪組を2回ずつ体験して、いろんな角度から見ることができました。12年間、娘役をやってきて、自分の中にあるものが、いい意味で出せたら-と思います」。

その朝月の特長について、本拠お披露目「CITY HUNTER」演出の斎藤吉正氏は「なんでも言ったことを吸収してくれる。リクエストを真摯(しんし)に受け止めて、倍にして返してくれる頼もしい娘役」と言う。斎藤氏は、朝月が花組時代の作品でヒロインに抜てきしたことがある。

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そのスキルには、全幅の信頼を置き「宝塚の娘役へのプライドと、その自負、ヒロインへの責任もとても感じながら演じてくれていて、責任感の強い娘役」と感心もする。

花組、雪組を往復した異例の組替えも、貴重な経験につながった。その結果「大きなヒロイン、花を咲かせてくれた。遅咲きの子だから、個人的には、今こうして花開いていることがとてもうれしい」と喜ぶ。

芝居では、ボーイッシュなヒロインを好演し、ショーでは、ダンサー彩風の相手役として、華やかな存在感も発揮している朝月。ショー演出の稲葉太地氏も、花組時代に娘役ダンサーを選ぶときは、必ず人選していたという。

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「遅咲きの娘役ですので、大人っぽい魅力とともに、彼女自身が持っている天真らんまんみたいなところも出てきたらいいな、と」

経験豊富で確立した娘役芸を持ち、さらにその芸に磨きをかける安定感抜群の朝月だが、素顔は「ちょっと抜けた」面もあるという。彩風もそのギャップに「人間性」を感じ、より親近感を抱いたとも語っていた。稲葉氏の期待も高い。

今回、ともにショーを作り上げ「とても歌劇が好きで、歴史にもとても詳しい。自分の娘役像、どうありたいか-を、一緒に研究してもらったような…」とまで感じているという。

そんな朝月が、彩風の相手役を務める新コンビ。稲葉氏は「2人になると、娘役がただ寄り添うだけではなくて、一緒に立ってともに進み、ともに雪組を引っ張っていく-。同士というか…」と、頼もしさが増すとも語る。

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宝塚歌劇の娘役は「寄り添う芸」を求められる面もある。その基本を踏まえた上で-。稲葉氏は「女性が1歩後を着いていくというより、同じラインで着いていくという形を示してくれている。そこが一番の魅力じゃないか」と話す。

斎藤氏も「2人のコンビ性は、ベタベタした雰囲気ではない。いい意味で独立感がある」とたたえる。

娘役の伝統的な寄り添い芸は「もちろん美しく、かれん」。さらに彩風・朝月は「ともに成長している。ともに、大人になって、自立したヒーローとヒロイン。ともにスキルを養ってきた分、お互いがひとりで、時には互いに助け合いながら、並行して歩んでいくような魅力がある」と言う。

トップコンビが組のイメージにつながる。新生雪組への期待値は高まるばかりだ。【宝塚歌劇担当・村上久美子】