上方落語協会の笑福亭仁智会長(69)が3日、大阪市北区の天満天神繁昌亭で、創作落語とアートなどをコラボレーションさせた新趣向企画を発表し、席上で創作の“ツボ”について語った。

若手落語家からの選抜メンバー8人が、お題3本をもとに創作落語に臨み、そのネタをもとにしたビジュアルアート「一枚の絵」を公募。それぞれ最優秀作を決めた後、絵本化も模索するという新企画。10月17日に大阪・大淀コミュニティセンターで「落語とビジュアルアートのアニュアーレ」を行い、若手8人がそれぞれのお題をもとにした創作を発表する

100本以上のはなしを生み出してきた仁智が審査員を務め、8人から優勝者も決める。仁智は、創作について「ゼロから作るのもいいけど、お題があった方がギアが入ると思います」。というのも、仁智自身、代表作のひとつになった創作ネタ「源太と兄貴」も、追い込まれて生まれたものだったと明かした。

以前、企画公演で、桂文枝(当時は三枝)が「何かひとつお題決めて、皆で創作しよう」と発案し、そのお題が「アイスクリーム」に決まった。期間は次回公演まで約2カ月。「苦しんで、苦しんで、まあひきょうなんですけど、オチに入れようと」。ここから生まれたネタが、バブル崩壊後の日本で、しのぎに奔走する源太とその兄貴分を描いた傑作だった。

時代の流れについていけない兄弟分を描いた作品は、時流に応じてアレンジも可能で、つねにブラッシュアップできる。今なお、進化を重ねるネタを1つのお題から得たのだった。

そんな経験から、お題創作に挑戦する若手8人に、仁智は「どっから切り口にするか。最初を間違うたらあかん」と、ネタへの入り口に腐心するようアドバイスを送る。ネタは「8分以上」をルールに、それぞれが自由に創作。また、その当日の高座から着想したビジュアルアートを一般公募。アートについては、来年1月の審査を経て、優秀作を決める。

また、落語については10月の公演で8人の順位をつけるが、アートが決まった後、来年2月19日には繁昌亭でも同様のネタ発表会を予定する。今年10月、来年2月と2回高座にかけた後、優勝者が決まる。その後、作品の内容次第では、絵本化も検討している。

若手落語家8人は桂米輝、桂三幸、露の棗(なつめ)、桂三実、桂小鯛、笑福亭智丸、笑福亭笑利、桂あおば(ネタ順)。