上田慎一郎監督(37)が14日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われたオムニバス映画「DIVOC-12」(ディボック-トゥエルブ、10月1日公開)完成披露試写会で、米ハリウッドでも使用される、最先端の映像制作技術「バーチャルプロダクション」を用いて行った撮影について、熱く語った。

バーチャルプロダクションとは、巨大で高精細なディスプレーを背景として使い、その前に俳優が立って演技するのを撮る、新しい技術と撮影手法だ。上田監督は「グリーンバックとかやと、後から入れると、その場はグリーンだと、こういう背景があるという体で芝居をしなければいけないので乗っていけない。。スタッフもキャストもイメージしづらいですし、手応えをつかんでいきづらい」とグリーンバックを使って撮影後にCGを加えていく従来の撮影手法を説明。その上で「巨大なLEDに背景CGを映して(俳優に)その前でお芝居をしてもらうんですけど(景色が)本当に後ろに映っているし、めっちゃいいと思って撮っていけるのが楽しかった」と振り返った。

上田監督は「DIVOC-12」で、松本穂香(24)を主演に短編映画「ユメミの半生」を製作した。「閉館のお知らせ」が壁に貼られたミニシアターのロビーで、女性スタッフのユメミが上映開始を待つ映画館志望の中学生カケルに、波乱万丈だという自分の半生を語り始める。半生の回想は白黒のサイレント映像から始まり、やがてそこに音がつき、色が加わっていく。

松本はバーチャルプロダクションでの撮影について「毎回、そのシーンによって場所の雰囲気がガラッと変わるので、同じスタジオではあるんですけど、後ろの映像が全然、変わったりして、そこに合わせる。毎シーン全然、違うからこそやりにくいということは、あまりなかった」と振り返った。

上田監督とともに「DIVOC-12」の企画の中核をなした藤井道人監督(35)は「本音ですか? いいなぁと思った。でも、テクニックだけじゃなくて作品に落とし込むのは、さすがだなと。楽しんで見られる映画」と上田監督の手腕をたたえた。三島有紀子監督(52)は「奥行きのある、ああいうバーチャルのものも、自分もいつか撮ってみたい。勉強になりました」と刺激を受けた様子だった。