「NiziUは存在していた」-。9月19日、多くの人が初めて9人の少女たちを“目撃”した。

デビューしてから、292日の出来事だった。9人組ガールズグループ、NiziUが「SUPERSONIC 2021」に出演し、初めてファンの前に姿を見せた。新型コロナ対策が厳重に講じられた中「Make you happy」「Step and a step」「Take a picture」など、約25分間で、5曲を披露した。

夢の舞台に、ようやく立った。目の前にいるのは、自分たちのファンである「WithU」。ファンの前にあるステージで、パフォーマンスをする自分たち。こんな当たり前だと思えることが、当たり前ではなかった。彼女たちにとっては、それが「夢」だった。

何度も何度も、この舞台に立つことを最大の目標に努力を続けた。“エネルギッシュなリス”RIKU(18)は、昨年12月のインタビューで「ここでこうやってやって(歌って)みたいな。泣く想定までしています。バラード歌いながら泣いて『みんなありがとう』って(笑い)。そこまで想像しています」。残念ながらバラードの歌唱はなかったが、事細かにリハーサル済みだった。

エンタメ界も、新型コロナの影響を大いに受けている。描いていた日程でライブの開催ができない中、もがき続けた。NiziUに至ってはコロナ禍でデビューを迎えたため、ファンは“目撃情報”がほとんどないアーティストを応援することになっていた。そのため、まずは何とかファンの人に見てもらいたい、「初ライブは、できれば有観客で」という思いがあった。

そして、念願かなった今回の初ライブ-。昨年12月のインタビューで、リーダーのMAKO(20)は「私たちも本当に、早くみなさんの前でパフォーマンスをしたい気持ちが本当に日に日に高まっていて。やっぱり観客がいるのと、いないのでは私たちのパワーも変わってくると思うので、それを早く実感してみたいなって思っています」。

半年以上の月日が経過したが、言葉通り、圧巻のパフォーマンスだった。表情やダンス、身体全体からあふれ出るエネルギー。「ファンに恩返しがしたい」。メンバー全員が、パフォーマンスでそれを表現しているように見えた。

場数が限られている中で、あまりにもキレキレなパフォーマンスを見たため、2曲目くらいで「このテンションで持つのか」と勝手に心配したが、最後まで生歌で安定したステージを届けた。

ライブ当日となった19日、天候までもが彼女たちの初ライブを“祝福”した。台風の影響も心配されていたが、当日は朝から二重の虹「ダブルレインボー」が関東の空に架かった。

同グループは、韓国の芸能事務所「JYP」に所属しているため、活動期間と、いわゆる準備期間とに分かれている。準備期間は、あまりメディアなどには出演せず、ファンは次の作品に向けた“推し”のイメージチェンジなどを心待ちにする。

ところがこのスタイルは、まだ日本には浸透していない。そのため準備期間中には「NiziUってどうしたの?」という声もチラホラ聞こえる。個人的には、デビュー1年未満で「どうしたの?」と心配されるアーティストということに、驚くばかりなのだが。

実際のところ、パフォーマンスは確実に一級品。今回のライブで、初めてNiziUを目撃した既存のファン以外も、SNSでそのパフォーマンスを絶賛した。時間はかかるかもしれないが、NiziUは新たなロールモデルになれる可能性が高いと考える。

長いトンネルをやっと抜けた感じがする。9人はステージ後、号泣したという。クールな印象が強いが、人一倍ファン思いなMAYUKA(17)は、ステージ上で涙をこらえきれなかった。

1日1日、やるべきことを毎日ノートにつづっているMAKOは「こうやってまた、みなさんにお会いできるよう、私たちも一生懸命頑張りますので、これからもNiziUの応援、よろしくお願いいたします」と呼び掛けた。

観客を楽しませるには、まずは自分たちが心の底から楽しまなくては伝わらない。9人の過去イチはじけたスマイルは、晴れ渡る空にピッタリだった。