舞台に立っているだけで「絵」になる。いわゆる“スター・オーラ”で場を照らす。退団公演中の星組スター、愛月ひかるは男役の麗しさを極める「ザ・タカラジェンヌ」の1人。兵庫・宝塚大劇場で、最後の公演「柳生忍法帖」「モアー・ダンディズム!」(11月1日まで、東京宝塚劇場は11月20日~12月26日)に臨んでいる。

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その開幕前に取材に応じた愛月は、真っ白なスーツ姿で現れた。「白が似合う男役でいたいなというのは、つねにあります」と言った。白色の上下で“キメられる”よう、自身を磨き続けた日々だった。それこそが、タカラジェンヌに求められる「品格」形成につながった。

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肌も真っ白。愛月はいつ会っても衣装、髪形に乱れひとつない。2歳の時、母のひざの上で初観劇して以来の宝塚ファン。自らがあこがれ、夢を見てきた世界だけに、ファンを思い、普段の生活にも気を配ってきた。

コンビニに行かない。自転車にも乗らない-。

スターはファンにとって「理想の王子様」だ。王子様はコンビニでおにぎりを買わないし、町中で自転車に乗らない。無論、日焼けもしない。舞台以外でも人前に出るときは徹底して、ファンの夢に応え、生活感を感じ取られぬよう、努力し続けてきた。

「品性、タカラジェンヌの品格って、その個人の内面からだと思うんです。私生活から(タカラジェンヌとして)品性を意識しないといけない」

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かつての取材時、愛月はこう語っていた。私生活から“襟を正す”のだ。「部屋の乱れは心の乱れ」と言い、自宅の清潔さにもこだわる様を語ったこともある。朝から掃除機を使うこともあれば、夜中に突然、台所の清掃をすることもあるという。

「この汚れを落とす」ことに集中すれば、ストレス発散になると話していた。「品性が大事-と言っておいて、家の中がゴチャゴチャではね」とも言い、笑っていた。徹底的に「美」にこだわり、内面から磨き、保ち、男役15年を走ってきた。

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そして、白色が似合う品性を保ったまま退く。今回のインタビューで、宝塚人生を振り返っての“色”を問うと、やっぱり-。

「どうしても、組カラーがついちゃうので…紫(宙組カラー)が長かったので、紫かな? とも思いますが、やっぱり白かな? ファンの方もそう思っているのかなと思います」

自身は、本来「ピンクと緑などの反対色を見ると元気になる」そうだが、常に見られる意識が高く、何より優先される。結局、選ぶ私服は「やっぱりモノトーンの洋服が好きなので、白とか黒とかスタイリッシュなものだった」と振り返る。

芯の通った「美学」に一切の乱れも、ブレもない。最後までタカラジェンヌとして、男役として、その道をきわめていく。【宝塚歌劇担当・村上久美子】