日本喜劇の“祖”でもある「曽我廼家」の名跡を継承する松竹新喜劇の植栗芳樹(39)桑野藍香(29)竹本真之(36)が14日、大阪市北区の日刊スポーツ新聞社を訪れ、未来の新喜劇を支える「3本の矢」となるべく、誓いを立てた。

喜劇の名門屋号を継ぎ、植栗が曽我廼家一蝶、ヒロイン女優の桑野は曽我廼家いろは、竹本が曽我廼家桃太郎を名乗り、11月6日に大阪松竹座で開幕する「松竹新喜劇 錦秋公演」(21日まで)に出演する。

松竹新喜劇代表の3代目渋谷天外(66)は、将来的に、故藤山寛美さんの孫で、新喜劇入りした藤山扇治郎(34)に託す準備を進めており、これを知る3人は「扇治郎にバトンが渡った時に、いい屋台骨でいたい」と抱負を語った。

松竹新喜劇のルーツは、曽我廼家五郎・十郎が日本で初めて「喜劇」と銘打ち、1904年(明37)に大阪・道頓堀の浪花座で旗揚げした「曽我廼家兄弟劇」。後に松竹家庭劇を経て、松竹新喜劇が誕生した。

この新喜劇の創設メンバーの1人が、上方喜劇女優の浪花千栄子で、昨年後期のNHK連続テレビ小説「おちょやん」で描かれた。

植栗によると、もともと襲名の話は数年前からあったが、おちょやん効果で加速したという。今年5月、襲名の打診を受け「僕、新喜劇マニアなんで、とびあがって喜びました。大雨の日(に言われた)なんですけど、忘れられません」と感慨深げに振り返った。

新喜劇も、かつてはテレビ放送されており、女性で名を継ぐ桑野は「テレビの地上波で放送してもらいたい」。岡山出身で桃太郎を名乗る竹本も「広く知ってもらえるよう、僕らも頑張りたい」と言う。

襲名のあいさつ回りで着ていた衣装は、昭和50年代に実査に使われていた制服。衣装という財産を継承し、同時に、当代の父で2代目天外がおこした新喜劇には、多くの名作が残る。3人は「衣装もですけど、作品も僕たちの世代が(次世代へ)引き継いでいきたい」と約束した。

「松竹新喜劇 錦秋公演」では、「おちょやん」にも登場した「お家はんと直どん」と、代々受け継がれてきた名作「お祭り提灯」を上演する。