2021年度の文化勲章受章者が26日、発表され、歌舞伎俳優尾上菊五郎(79)らが選ばれた。

菊五郎は「このような、栄えある勲章をいただけるのは、不器用な私に懇切丁寧にご指導くださった先輩方、父(尾上梅幸)のおかげだと、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです」と喜び、「オリンピックの年に歌舞伎界が金メダルをいただいたような気持ちになって、一生忘れられない年になりました」と、感慨深げに語った。

知らせを受けた時のことを菊五郎は「フラッシュバックのように、先輩たちの顔が浮かんで、ありがたかったです」とし、2代目尾上松緑さん、17代目中村勘三郎さんら、数多くの先輩の名前を挙げた。「私ほど先輩方に教えを受け、かわいがられた役者はいない」と振り返った。

父梅幸さんの教えは、後輩たちにも伝えている。「父は『基礎をしっかりしておけ。基礎をしっかりしておけば、建物は建て替えられる』と言っていました。後輩にも基礎はしっかり、と言っています」とした。

1948年(昭23)に初舞台を踏み、1973年(昭48)に菊五郎を襲名。歌舞伎界を代表する役者の1人で、当たり役は数多い。

好きな役、転機になった役を聞かれ、菊五郎は「出世作となりました(『弁天娘女男白浪』の)弁天小僧ですかね。1000回近く務めさせていただいております。『髪結新三』『魚屋宗五郎』も思い浮かびます」と話すと、「この後もまだまだ役者の道は続く。歌舞伎の持つ独特な形式美、色気、艶、愛嬌(あいきょう)、江戸っ子かたぎを研究して、お客さまに楽しんでいただける役者になりたい。役者はいくつになっても、死ぬ間際まで発展途上です」と語った。

妻で女優富司純子も一緒になって喜んでくれたという。菊五郎は「私の手綱を引っ張ったり、緩めたり、時々放牧してくれたり、ただただ感謝の一言です」と笑った。

菊五郎が出演中の東京・歌舞伎座「十月大歌舞伎」は27日が千秋楽。11月1日に同劇場で初日を迎える「吉例顔見世大歌舞伎」にも出演する。