愛と人間の業を描いた小説や心に寄り添う法話で知られ、文化勲章を受章した作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが9日、心不全で死去した。99歳だった。

瀬戸内さんは演歌・歌謡曲の作詞もした。中村美律子(71)に05年に「風まかせ」を書いた。

<歌詞>春の日出逢い 夏の日燃えた 激しい恋も 悶えた愛も 秋風吹けば 冷たくなる

季節の移り変わりに重ねて、恋愛を風まかせと巧みに表現した。2番では「奪って与え 与えて奪い 死んでもいいと すがって泣いた」と書いた。女の性愛を真正面からとらえた小説で知られる瀬戸内さんならではの歌詞である。

秋元順子(74)には11年に「その花は…~変わらぬ愛~」を書いた。

<歌詞>ああ 咲き誇れ 愛よ高らかに 紅い糸 導くままに…永久に響けよ 喜びの歌

壮大なラブバラードで、恋愛観だけでなく人生観までをも表現した。

06年のNHK全国学校音楽コンクール高等学校の部の合唱課題曲「ある真夜中に」も作詞した。

<歌詞>ある真夜中 どこかの星の熱いため息が 花びらになって降ってきた 花びらは舞ながらささやいた

「花びら」は女性である。2番では「花びら」の部分が「雪」になっている。「雪」は男性である。男女を対比して、「迷いと苦悩」「愛する幸せと感謝」「祈り」「時空を越えた愛」の4楽章からなるドラマチックな組曲となっている。寂聴さんは「男女のプラトニックな関係」を描いたと話している。出会ってすぐに結ばれ、簡単に別れてしまう、現代の恋愛の風潮を批判しているとも言われる。こうしたテーマを高校生の部の歌詞にするところも、さすが寂聴さんである。【笹森文彦】