東京オリンピック公式記録映画の監督を務める、河瀬直美監督(52)が25日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から、日本人として5人目、また日本人女性で初めてユネスコ親善大使に任命された。同監督はこの日、フランス・パリのユネスコ本部でオードレ・アズレ事務局長からユネスコ親善大使任命の委嘱書を授与された。

河瀬監督は「このたび、ユネスコ親善大使に任命されましたことを大変誇りに思います」と感謝した。その上で「この地球上に暮らす、すべての人が唯一無二の存在として、その人生を謳歌(おうか)する権利を有しています。けれどあらゆる『ひずみ』の中で、特に女性の声を含む、小さな声がかき消されてゆく現実も目の当たりにします。これら多様な価値観に光を当て、たしかな命のきらめきに気づかなければならない」などと訴えた。

河瀬監督は、新型コロナウイルスの感染拡大が日本でも進んでいた20年5月、ユネスコが呼びかける世界的なオンラインディベート(討論)シリーズ「レジリアート」を日本で初めて開催。「文化とコロナウイルス~アートの力を考える~」と題し、レジリアートの認知、拡大に貢献した。また、15年のカンヌ映画祭ある視点部門でオープニング上映された「あん」など、あらゆる年代の女性の生活に焦点を当てた映画によって、人類への理解を深めるきっかけを提供したことなどが評価された。

河瀬監督は「人類の根源的に豊かな営みを1000年先にも、またそのずっと先にもつないでゆきたい。映画や映像制作を通じて、物語の中に、人類の豊かな未来を創造すべく、親善大使としての任を全うしたいと思います」と抱負を語った。

また、26日には、カタロニア文化の国際的な振興を支援した貢献者に対して、アンドラ政府とラモン・リュイ・ファンデーション1から共同授与される「Ramon Llull Prize」(ラモン・リュイ・プライズ)を日本人女性として初めて受賞し、授賞式に参加する。

さらに、ユネスコ親善大使の活動として、22年夏に再開される文化交流プログラム「Grand Voyage with Africa」では、プログラムアートディレクターとしてアフリカ5カ国から選ばれた若手女性映画作家10名との映画ワークショップを統括する。