“泣き歌の貴公子”と呼ばれるシンガー・ソングライター林部智史(33)が29日、東京・国際フォーラムで全国ツアー「林部智史 CONCERT TOUR 2021~秋冬“まあだだよ”」の最終公演を行った。「まあだだよ」「あいたい」「ラピスラズリの涙」など全18曲を情感たっぷりに歌い上げた。

アンコールでは、今年1月にリリースしたアルバム「まあだだよ」の楽曲を書き下ろしたシンガー・ソングライター小椋佳(77)を林部がサプライズで紹介。来年で歌手活動からの引退を表明している小椋は、ソロで「少しは私に愛を下さい」を熱唱。「林部君のコンサートなのに、突然、変な老いぼれが出てきてびっくりしたんじゃないの。もう、僕、77歳ですからね。本当にじじいです」と笑った。そして「ずっと楽屋で聞いていたけど、本当にいい声出すね。うらやましかったですよ。うまいね、やっぱり」と林部にエールを送った。

林部は「今回のツアーは小椋佳さんをメインで歌ってきた。ファイナルで登場していただいて、僕にとっては糧になる。小椋さんは、来年、ラストツアーをやります」。小椋は「これから1年間ちょっと、全国を回ります。本当、老衰していますから、2時間半、体がもつか。必死ですよ、本当に」と話した。

そして、林部と小椋で「歓送の歌」をデュエット。小椋は「長いことサラリーマンをやっていましたが、転勤とかで歓送会というのがある。気に入らない人とかだったらいいんだけど、親友みたいな人を送り出してあげたいと思って作りました」。

最後は「愛燦燦」をデュエット。林部は「ツアー全10公演完走しました。ありがとうございました」と頭を下げた。

取材に応じた林部は「小椋さんに感謝の気持ちでいっぱいです。小椋さんの世界をつづって歌うことで、感謝の気持ちを表したい」と話した。

2016年(平28)にデビューして、5周年の今年はコロナ禍もあった。春から夏のツアーでは中止となった公演もあったが、この秋から冬は全10公演が行えた。「コンサートができない期間もあった中で、10公演回れた。1公演、1公演がありがたい。3年目までいろいろなことがありましたが、やっぱりコロナ禍のこの2年は大きいなぁと思う。自分の歌い手としてのコンサートへの向かい方があった。いろいろなアーティストがSNSで配信を始めて、ステージがない中でどう歌うかを考えた。僕は『おうちでコンサート』で無観客で配信。コンサートアーティストとして、あらためて向かい合えた5周年の年でした」と話した。

林部の10倍の50周年を迎えた小椋とは、ステージ上では3回目の共演となった。「今回が3回目。元々、曲をかいてもらったのも、共演したことからなんですが、いい意味でようやく慣れてきました」と笑った。

レジェンドとの共演に「音楽的にはモニターの使い方が全然違う。隣に立った歌い手の小椋さんは、本番のスイッチの入り方が全然違う。歌も、見せ方もリハとは変わる。オーラがでて“THE 歌い手”という感じ。キラキラしてるし、ギラギラしてる。まねできたらいいですね」と話した。

小椋が歌手引退を表明していることについては「そういうことはおっしゃらない。全て歌を通してやりとりして、とくに会話はありません」。小椋からは「自分の歌っていく楽曲をしっかり選んで歌っていってほしい」と言われた。「父を感じますね。小椋さんのイメージは背中。歌っている姿を、見続けていきたい。これからも小椋さんの歌は残るし、歌い継いでいきたい」と話した。