コメディアン、ぜんじろう(53)が20日に東京・下北沢の小劇場・楽園で開催される公演「スタンダップコメディGO! Vol.2」(午後6時30分開演)に出演する。他に清水宏(55)、ラサール石井(66)、インコさん(45)が出演する。90年代前半に「平成の明石家さんま」としてブレークした、ぜんじろう。スタンダップコメディーの旗手となるまでの歩みを聞いた。

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大阪芸大芸術学部デザイン学科中退。2日でやめている。

「入試に遅刻して行って、花瓶を描けと言われて、あと10分くらいしか残っていなかった。周りを見たら、みんな花瓶を描いている。こら、アカンと思って、花瓶以外を描いたんですよ。それ見て、面接の時に『なんで君は花瓶描いてないのや』と聞かれて、チャンスやと思って『見えるもの全て芸術ですから』みたいなこと言ったら『すごいな、君は』と。東京芸大があるから、すごい国立のように思われるんですけど、私立なんです。ある程度の私立ですから、お金がいるんでね。中流家庭の貧乏人のボンボンが多いです(笑い)。やる気はあるけど、でも途中でケツ割るやつも多いっていう」

合格したが、すぐに学校に行かなくなった。親からもらった学費で、悠々自適の楽しい生活を送っていた。そして、上岡龍太郎との運命的な出会いを経て弟子入りした。

「大阪芸大に行って2日目に友達と大阪の街を歩いていたんですよ。そうしたら初めて芸能人を見た。浜村淳さんだったんですよ。友達を笑かそうと思って『ちょっと見といてよ』と近づいていったら、上岡龍太郎だった(笑い)。僕、普段びびりなんで、エンジン吹かして行ったんです。設定値間違えて、エンジン吹かしすぎて、友達笑かそうと『弟子、してぇや~』って(笑い)。痛いやつですよ。上岡さんのイメージは、大阪で売れてて、ちょっと怖い人。キレるとかあって、朝日放送も出入り禁止になったりという時でした」

突然の見知らぬ若者の無礼な弟子入り志願。上岡は予想外の反応を見せた。

「『何しとんねん、お前』って言うかと思ったら『うん、いいよ~』って。エッと思って。喫茶店行こうかってなって『君、なんで僕を選んだの』って聞かれたんです。ギャグですって、言えんでしょ。まだ、18歳の時ですよ。なんか言わなアカンなと思って、またエンジン吹かしすぎて『面白いから、売れると思いますよ』って(笑い)。そしたら上岡は『君にとって、僕は売れてない?』って。しもたと思ったけど『そこそこです』って。そしたら上岡が『君、面白い』って。『君、ええなぁ。売れるかもしれんな、ひょっとしたら。君、何してんの?』って。芸大がどうのこうのって、奈良の近くにあるんですよ、奈良芸術大学ですよ、いんちきですよとか話したんですよ。そしたら『面白い。君、芸大行くより、上岡大学来なさい。面白いわ』。で、師匠のところに行ったんです」。【小谷野俊哉】(続く)

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◆ぜんじろう 1968年(昭43)1月30日、兵庫県姫路市生まれ。大阪芸大芸術学部デザイン学科中退。87年、上岡龍太郎に入門、吉本興業に所属。88年月亭かなめとの漫才コンビ、かなめ・ぜんじろう結成。同年、今宮子供えびすマンザイ新人コンクールで福笑い大賞。89年(平元)、ABCお笑いグランプリで最優秀新人賞、上方漫才大賞新人奨励賞も、解散してピン芸人に。92年、毎日放送「テレビのツボ」司会でブレーク。95年「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」。98年渡米。01年帰国。170センチ、57キロ。