22年4月でデビュー20周年を迎える、お笑い芸人もう中学生(38)。今年はテレビでの活躍も増え、10月からは初のレギュラー冠番組「もう中学生のおグッズ!」(テレビ朝日系、月曜深夜2時36分)もスタートした。常に頭の中にあるのは周囲への感謝の気持ち。駆け抜けてきた時間を振り返りながら、今後の理想像を語った。【取材・松尾幸之介】

インタビュー 「自分のスタイルを貫く」と力強く語ったもう中学生さん、おどけた表情の奥には男としてのかっこよさが詰まっていました。=2021年12月13日
インタビュー 「自分のスタイルを貫く」と力強く語ったもう中学生さん、おどけた表情の奥には男としてのかっこよさが詰まっていました。=2021年12月13日

★1月から135本出演

取材前には八百屋に行ってきたという。昔から変わりないルーティンで、この日はみかんを買った。もう中学生は「八百屋さんに行って、定食屋さんに行って、お仕事して、家で段ボールをせっせと作って…というずっとそういう生活です。あんまり変わってないですね」と笑う。冬の寒空の下でも半袖短パン。ネタの段ボール芸も変わらない。「自分が好きだったり、心から出るもの以外をやったりしても、あんまり性に合わなかったりするので」。変わったのは「年齢のせいかな」と語った髪形ぐらいかもしれない。

そんな中で、2021年は飛躍の年になった。メディアの調査・分析を行うニホンモニターによると、1月~11月のテレビ出演数は昨年の14本から135本に増加。初のレギュラー冠番組「-おグッズ!」のほか、9月にはNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」にも出演した。「ありがたいことに今までよりもたくさんお仕事をいただけるようになったりとか、とても光栄でございます」

ネタ番組などでの活躍とは違い、背筋も引き締まっている。

「20分番組なんですけど全体的なボリュームは濃密です。毎週やってくるので、違う言葉を使ったりとか。他の番組へ臨む時と準備的なものや気持ち的には変わらないんですけども、でも、どこかちょっとやっぱり(手土産で)おみかん持っていかないとなっていう気持ちはあったりとか。ここまでご用意していただいたものを最高のものにするために頑張らなければなっていう気合は入っています。でも、そうやって考えさせていただけるのも全部ひっくるめてありがたいです」

支えてくれた先輩らへの思いもあふれる。20年に出演した有吉弘行(47)の冠番組「有吉の壁」(日本テレビ系)での活躍、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)内で麒麟・川島明(42)が自身の「無観客ライブ配信」を紹介したことなどをきっかけに周囲の反響を感じることが増えた。ペナルティーのワッキー(49)からも会うたびに激励を受けている。

「ワッキーさんとは基本的にはずっとふざけあってるんですよ。でも『今日もありがとうございました、お疲れさまでした』ってなった別れ際とかに『大丈夫だからね』とか、『お前、本当面白いな』とかポロって本気の一言をお尻をはたきながら言ってくれたり。帰りの電車ですごく熱く、ジワーっときていました。こんなことをおっしゃってもらったのに、これ以上ふんわりしてしまったらいけないなって。本当にグっと力が入っていましたね」

▼▼芸人をやめようとした日々・・・後編へ▼▼

★ブレないお笑い第一

00年代後半に出演していたフジテレビ系「爆笑レッドカーペット」や日本テレビ系「エンタの神様」などで活躍し、お茶の間の人気者に。その後、仕事が減っていた時期は「中途半端なのはよくない」と芸人を辞めようとしたこともあった。「終電で行けば絶対に帰ってこれない」と神奈川県内の海へ向かい、朝までネタ練習や、かつて養成所で習ったことを地道に復習したりもした。「あんまり人に言ったことないですけど、ちょっと異常な生活をしていたなと思います。自分の生活を切り詰めて切り詰めて毎日生きて。お金を出し渋ってしまったりとか、周囲を困らせてしまったりしてきて」。それでも諦めなかったのは先輩の言葉と、お笑いが好きな気持ち。「そうしたタイミングで先輩方がいろいろと救ってくださった。あらためて、すごくいい環境にいるなと。みんなが切磋琢磨(せっさたくま)しているので。家に帰ってぼんやりしようとかはまず思えなかった」

故郷の長野で暮らす両親への感謝もある。「本当に心配とか迷惑はかけ続けちゃったなと思う」と振り返り「やっぱり親の方がいろいろ言われただろうなと思って。『息子さん何してるの』とか『今どうしてるの』と言われたりとか。僕がテレビに出た影響で何か言われたりするのかなとか。いらない心配をかけているので。どっしりと構えてお笑いをやって、心配をかけないようにしていきたいですね」

粘り強く活動を続ける中で、新たなファン層の開拓もある。資生堂「uno」のweb動画では「大人への進化」をテーマにクールな姿も披露し、ネット上では「イケメン」「かっこいい」と話題になった。それでも、お笑い第一の姿勢はブレない。

「『彼女作らないの?』とか言われたりするんですけど、まず自分のなりたいものになったり、行きたい場所に行かないと。タイミング見て、できたらいいんですけど今は考えられない。まだおしゃべりもちゃんとできなかったり、エピソードトークもふんわりしていたり、小道具も面白さを出しきれてなかったりする中で、やっぱり一番優先したいのは笑いです。そもそも(女性から)お誘いないですよ」

あっという間にデビューから20年がたち、38歳を迎えた。節目の2022年で掲げるテーマは「感謝」。思いを還元できるような活動を続けていく。

「本当に何もお返しできていなくて、まだまだ自分は途中なので。感謝を伝えきれてない人もたくさんいます。そういった人たちにお笑いを届けることを2022年の目標にしていきたいです。みなさんの生活のお供になり続けられるような人に必ずやなりたい」

まだ、ゴールだとは思っていない。もう中学生の見据える目標は、まだまだ先にある。

「もう中学生のおグッズ!」秋山直プロデューサー(29)

お仕事でご一緒すると、いつも「タレントグッズ」を小道具として持ってきてくださるので、打ち合わせで「最近何か新しいグッズ買いました?」と聞いてみたら、謎のタレントグッズが懐から4つぐらい出てくるんです。「こんなに熱があるなら番組にできる」と思って「もう中学生のおグッズ!」の企画書を出しました。普段からとても温かく、礼儀正しい方なので、どんなぶっ飛んだボケをかましても、ロケ先の方が優しく受け入れてくださるのが印象的です。スタッフも「おグッズ」のロケはいつも本当に笑っていて、楽しそうにしています。

◆もう中学生(ちゅうがくせい)

1983年(昭58)2月14日、長野市生まれ。01年、吉本興業のNSC東京校に7期生として入学。大きな絵を描いた段ボールを使い、ハイテンションの甲高い声でネタを話す異色の芸風で人気に。18年にはミュージカル「メリー・ポピンズ」にも出演。特技は自転車こぎ、野球、アーク溶接。180センチ。70キロ。血液型O。