今年で34回目を迎えた日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、株式会社石原音楽出版社協賛)に新設した「ファンが選ぶ最高演技賞」に昨年7月に30歳で亡くなった三浦春馬さんが、「ファンが選ぶ最高作品賞」には最後の主演映画となった「天外者」が選ばれ2冠に輝いた。田中光敏監督(63)は「三浦春馬君、おめでとうございます。君の芝居、思いはたくさんの人々に届いた。素晴らしかった」と祝福し喜びを分かち合った。

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次回作「法定相続人(仮)」の撮影準備中で、リモートで取材に応じた田中監督は「春馬君が主演で賞をいただけたことが、本当にうれしい」と感無量の表情を浮かべた。日本アカデミー賞新人俳優賞、優秀助演男優賞などの受賞歴がある三浦さんが、主演俳優として受賞したことを喜んだ。

「天外者」は、幕末から明治初期に活躍した大阪の実業家・五代友厚を主人公に、17年に田中監督と脚本家の小松江里子氏が史実を元に、日本の未来を思う五代の精神性を現代に伝えるべく物語を創作。透明感があり、強い信念を持ち美しい五代のイメージにかなう三浦さんにオファーした。

撮影は1年以上遅れたが、三浦さんは初挑戦の時代劇映画への主演に強い意欲を持ち所作、殺陣や五代について学び、準備を重ねた。並行して三浦翔平(33)蓮佛美沙子(30)ら親交が深い俳優に共演を呼びかけた。19年10、11月の撮影では、田中監督に「五代なら、こう思うと俺は思う」などと提案。本番前に試した上で提案通りシーンが変更されるなど、演じる以上に深く映画作りに関わった。

三浦さんは完成した映画を見ることはかなわなかったが、声を入れ直すアフレコの際にラストシーンを見て「俺、頑張ったから。(シーンが)こんなふうにつながってるんだ。いいですね」と涙を流したという。田中監督は「彼くらい真面目に、真っすぐに役、作品作りに向かっていく俳優は貴重。三浦春馬がいなかったら、この作品は出来なかった」と改めて感謝した。 【村上幸将】

◆三浦春馬さんの歩み 97年のNHK連続テレビ小説「あぐり」で子役としてデビュー。06年「キャッチ ア ウェーブ」で映画初主演。08年「恋空」で日本アカデミー賞新人俳優賞、14年「永遠の0」で同優秀助演男優賞を受賞。16年の主演舞台「キンキーブーツ」で、読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞。

◆ファンが選ぶ最高演技賞&最高作品賞 新設した、一般のファン投票で決定する初の部門。最高演技賞は男女合わせて50人、最高作品賞は50作品の候補から選択。ニッカンスポーツコムに会員登録(無料)したファンから1日1回、投票を受け付け、投票総数は両部門ともに11万567票。

※第34回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の受賞者、作品は明日28日の日刊スポーツ本紙、ニッカンスポーツ・コム、ユーチューブチャンネルで発表します。