「第34回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」が昨年12月28日に日刊スポーツ紙面とニッカンスポーツ・コムで発表されました。発表当日に掲載しなかった部分も加えて、受賞者インタビューでの言葉をあらためて掲載します。

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鈴木亮平(38)が「孤狼の血 LEVEL2」「土竜の唄FINAL」「燃えよ剣」の3作品で助演男優賞を受賞した。「自分の中で(俳優は)ただの仕事ではなくて、生きていく“柱”」と語り、今後については「どういう俳優かわからないよねって言われたいです」と、イメージを固定することなく、新たな鈴木亮平像を作り続けていく覚悟を示した。

以下一問一答

-18年公開の映画「孤狼の血」に続く、「孤狼の血 LEVEL2」。続編からの出演にはプレッシャーもあった。

「(前作出演の)役所(広司)さんがいない。(松坂)桃李は昔から知っている仲で、僕と桃李とで、どうやって『1』を超えていくかという。言わないまでも意識はありました」

-演じたのは、親分の敵をとるためなら手段を選ばず、ちゅうちょなく人を抹殺する凶悪な上林役。

「悪役。悪役としていなきゃいけないんですけど、僕は“善人”とか“悪人”とか分けているつもりはなくて。どっちの立場から見るかで、全然世界って変わって見えるものだと思うので、“悪役”という印象はあまり感じていなかったです」

-「上林」という役をどう自分の中で落とし込んでいったのか

「自分とはかけ離れた価値観を持っている人なので、そこをどう理解していこうかっていうところに時間をかけました」

-撮影は緊急事態宣言発出のさなか、広島で行われた。

「手元に残った台本が、これしかないという中で、演じた上林という人物を深く掘り下げていく時間があった。それが光栄でした。ある種、けがの功名だったと思います」

-役作りのために、撮影が始まる前に広島入りした。

「広島入りしてから彼の心情に近づいていくという半年間でした。理解するというか、『ヤクザの世界ってどういう世界なんだろう』とか、『これまでどんな抗争があって、広島はどういう街で、原爆投下があって、どう復興してきたか』とか。そういうことも含め1つ1つ自分の中で理解して作っていきました」

-劇中では、親指を切り落とすシーンや、アイスピックで額を突き刺すシーンなど刺激的なシーンが多数があった。

「実は台本ではもっと激しかったんです(笑い)。めった刺しにしながら、『何じゃわれこら』って言ったりとか」

-白石和彌監督とは初タッグ。

「さすが白石監督だなって。本当に俳優をうまく見せてくれる。自分以上の実力があるように見せてくれるというところが本当にさすがですよね。作品全体として面白い。エンタメを作るのがとてもうまい人ですよね」

-「土竜の唄FINAL」(三池崇史監督)では主演の生田斗真(37)と4回目の共演を果たした。

「いくつになっても勉強になる。ポップなお芝居が非常にうまいし、そのコメディーセンスというのが、全く僕にないので、すごく憧れてきたし、自分にないものをたくさん持っている人ですね」

-「燃えよ剣」(原田眞人監督)では岡田准一(41)と共演。

「岡田さんはすごく広い視野。作品を役者としてだけではなくて、出来上がりまで見据えていて、リズムから絵のフレーム、レンズのミリ数から、全て把握した上でやっているというところが、すごくみてて勉強になりました。自分もそうありたいと思いました」

-21年7月期TBS系ドラマ、日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」では主演。一部作品の公開延期などで運命的に出演作が重なり、ヒーローから悪役まで繊細に演じきった。

「必然的に大事な年になりました。演じるのが好きなんですよ。好きというか、自分の中で(俳優が)なくなったらどう生きていこうっていうぐらい、ただの仕事ではなくて、生きていく“柱”みたいなものなんです。いただける1つ1つの役を後悔のないように、失礼がないように、精いっぱい役を愛すということを大事にしています」

【三須佳夏】

◆鈴木亮平(すずき・りょうへい)1983年(昭58)3月29日、兵庫県生まれ。東京外語大英語専攻卒。06年テレビ朝日系ドラマ「レガッタ~君といた永遠~」で俳優デビュー。07年「椿三十郎」で映画デビュー。18年に大河ドラマ「西郷どん」で主演。世界遺産検定1級を所有しており、20年に著書「行った気になる世界遺産」を発売。186センチ、血液型A。

 

◆「孤狼の血 LEVEL2」 呉原東署の刑事・日岡秀一(松坂桃李)は広島の裏社会を治めていた。その中、五十子会の上林成浩(鈴木)が刑務所から出所し、恨みがある人の家族を惨殺したり兄貴分、組長らをあやめ、上林組を興し、日岡の前に立ちはだかる。

◆「燃えよ剣」 武州多摩で“バラガキ”と呼ばれた土方歳三(岡田准一)は、武士になる夢を胸に近藤勇(鈴木)沖田総司(山田涼介)ら同志と京都に向かい、芹沢鴨(伊藤英明)を局長に擁して新選組を結成。討幕派の制圧に動くが、時流は倒幕へと傾いていく。

◆「土竜の唄 FINAL」 菊川玲二(生田斗真)は警察をクビになり潜入捜査官“モグラ”に任命され麻薬撲滅のためヤクザのドンを逮捕すべく組織へ送り込まれる。過去最大の取引額6000億円の密輸阻止に動く玲二の前に最凶の敵轟烈雄(鈴木)が現れる。