昨年大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」第2部(午後9時)の平均世帯視聴率が、関東地区で34・3%(ビデオリサーチ調べ)で、紅白史上最低だったことなど、本紙をはじめ、検証やコラムがさまざまなメディアで取り上げられた。

コロナ禍で、さらに“本拠地”NHKホールが工事のため使用できないという、昨年に続いて“イレギュラー”な紅白だった。コロナ禍において、昨年はリモートで「代表取材」の形に近かったリハーサル取材も、内容までは見られずも、ステージ上との“対面”で行われた。また本番も有観客で迎えられたことは1歩前進した形ではあったが、予断を許さないコロナ対策などもあって物理的に「中継」や「収録」も多かった。

郷ひろみがロビーから客席に、そしてダッシュして出演者が待つステージに駆け上がっていくシーンは「紅白が戻ってきた!」と感じたし、松平健がスケボーに乗って現れ、出演者も一緒に「マツケンサンバII」を踊るシーンに「これぞ紅白!」と思わずうなった。出場歌手発表の際、「偉大なるマンネリが必要」と記事を書いたが、「●●が○○と隣にいて楽しそう!」とか、1カ所に集結することで生まれる空気感が紅白の醍醐味(だいごみ)の1つだと実感した。

昨今は民放各局でも季節ごとに「大型音楽番組」の放送が定番化しており、「紅白」のオリジナリティーは、やはり「歌合戦」という点にもあるだろう。時代の流れから紅白を性別で分けることのぜひなど、今後も議論がされていくだろうが、例えば男女で出場組数は平等にした上で、「組分け抽選会」を行えば、1つの話題づくりにもなったり、「衣装対決」「同門対決」など、分かりやすい仕掛けもつくれて、歌合戦の要素もより濃くできるのではないか。

視聴者それぞれにも「こうすればもっとおもしろくなる」という案がきっとあるだろうし、これだけ議論される番組も、他にはないことも事実。改めて“国民的音楽番組”であることを感じつつ、今年の大みそかに向けても、注目していきたい。【音楽担当=大友陽平】