濱口竜介監督(43)と美術家の奈良美智氏(62)が14日、都内で対談を行った。2人の対談は、日本で初めてクラウドファンディング・プラットフォームが運営に携わる映画館として、20日に東京・下北沢にオープンするミニシアター「K2(ケーツー)」の開館を記念して実現した。

濱口監督作品では、映画「ドライブ・マイ・カー」が米ゴールデングローブ賞非英語映画賞を受賞したことが話題となっているが、K2では世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭(ドイツ)で審査員大賞(銀熊賞)を受賞した「偶然と想像」が、こけら落とし上映される。

濱口監督は「あれ、やりたくないなぁと思って生きている人間ですけど、なぜやっていいか分からないけれど、これはやってもいいと、モヤモヤやっていたら、脚本だったらスーッと書けるし、筋が通っていく感じがする」と自身の内面を語った。その上で「それを、役者さんと集団でやる(映画を作る)時も起こそうとしてやっているところがある。起きる時と起きない時があると思うけれど、起こすための試行錯誤って何かあるんですか?」と奈良氏に尋ねた。

奈良氏が「その時、その時では多分、ない。絵を描く前までの過程、描き始めてからの絵の関係ないところで経験した諸々が、予期しない化学変化を起こす」と答えると、濱口監督はうなずいた。その上で「生きている時間が解決するのは分かる。でも、自分は、それをしづらい人間。勉強や、同じことをやるのが好きで、20代は勉強し、映画も年に何百本も見て、作って、技術も上がった感じがした。でも20代後半で魂が入らない、このままでは作ることが出来ない、映画以外の経験が必要だと思った」と、劇映画作りに行き詰まりを感じた時期があったと明かした。そして「(2011年に)東日本大震災が起き、記録映画を撮った。そこで劇映画を作っていけるという感覚を持った」と語った。

奈良氏は「震災後の映画を見たら、この人の映画は普遍性を持つ…終わりがない感じがした。ずっと継続していく、ゆるやかな波を感じた。非常に気持ちが良い波を最新作にも感じる」と、同監督の「偶然と想像」「ドライブ・マイ・カー」を評価した。