女優紫吹淳が4月19日にビルボードライブ大阪で、シャンソンの世界を歌う。86年に宝塚歌劇団に入団。花組、星組、月組、専科を経て01年に月組トップ。男役18年をつとめて04年に退団し、女優へ転身した。今年3月21日に退団丸18年。男役人生に女優紫吹淳が追いついた。「もう女が分からないとは言えない」。新たな1歩を踏み出した。【取材・構成=村上久美子】

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20年大阪公演以来のビルボード。4月7日にはビルボードライブ横浜で公演を終えた。

「前回のビルボードは元気なイメージだったので、今回は大人な感じにしようと、シャンソンに」

前回がニューヨークをテーマとし、今回はパリを舞台に選んだ。結果、シャンソンへ挑むことになった。「愛の賛歌」「ろくでなし」「ラ・ヴィ・アン・ローズ」や「モン・パリ」などを披露する予定。

「ほかに、宝塚男役時代の曲も! シャンソンって、歌詞がポエム…難しい。すてきですが、もうちょっと先でいいかな? とも思っていたんですが…」

今、シャンソンに挑む理由-。「女優」が「男役」に追いついたこともある。

「実は私3月21日で退団丸18年。男役18年に、初めて女優が追いついた。もう『女として分からない。男役の方が長いんで』とは言えないんです(笑い)。私が18年かけて築いてきた『女』を見てほしい」

退団後、長らく所属した事務所を20年夏に退所。個人事務所を立ち上げた。再始動にあたっても、在団中からずっとサポートを続けてくれる人が近くにいる。

「私は人に恵まれてきました。人を見る目-といいますか、直感ですね。でもね、まずは会ってみる。最初は『嫌な人』と思っても、仲良くなるケースもある。一緒にいて居心地がいいということですかね」

そして続けた。「耳が痛いことを言ってくれる人でないとダメ」と言う。

「なんでも『そうだよ』『いいね』ばかりではダメ。トップになった時、誰も嫌なことを言ってくれなくなって、怒られもしなくなって、寂しくて、怖かった。本当のことを言ってくれて、言葉でぐいっと引っ張っていってくれる人がいて、本当によかった」

スターシステムの宝塚にあって、トップは絶対的存在。トップの個性で作品が決まることも多く、成否すべてを背負うと言っても過言ではない。それゆえ技量だけではなく、人格も求められる。トップ時代の経験が今なお生き、人のぬくもり、その温かみも知る。

「私は『人は人で癒やされる』と思っています」

在団中も、退団後も、山も谷も、人とのつながり、絆で乗り越えてきた。そろそろ、生涯の伴侶は-。

「人生を考えたとき、結婚も…。すてきな人に出会えればって、考えますね。でも、今は細く長く、ファンの方にお返しをしていきたい。男役として、理想の男を求めてきて、なかなか完全な人は…。まあね、やめて3年ぐらいで『そんな(自分が演じてきた理想的な)人はいない』と分かったんですけどね!」

以前は「50歳ぐらいまでには結婚している」と思っていたそう。現在、53歳。「けど、過ぎてしまったら、どうでもよくなっちゃって」と笑う。

「妥協しないといけないなら…いいやって。ここまで、この生活スタイルできていると、このまま受け入れてくれる人が現れれば…ですけどね。なかなか」

あっけらかんと話す。コロナ禍が長引き、料理時間は増えたという。

「体のこと、健康のこと、気にするようになりました。食材のパワーにこだわって、どうせ頂くなら、素材の持つ力があるものをって。少し前まで、大根に。1センチぐらいに切って、それをスライスして、しょうゆなどで味付けして」

取材した数日前からは「酢キャベツ」にはまっていると明かした。

「塩こうじに入れてもんで、リンゴ酢をかけて。腸活にいいんですよ。腸はすべての健康につながってます」

昨年、35周年だったが、コロナ禍で中止になった。

「コロナと共存であっても、薬ができるとか、普通にマスクが外せる生活ができるようになったら、その時に(35周年を)やろうと思っています。その時まで、きれいにいようと思って、食生活も体も気をつけて。腸活もその一環です。免疫力もあがりますしね」

感染対策への意識も高める。免疫力は体温をあげれば上がる。冷え性だったゆえ「しょうがを毎日。しょうが湯作り置きでもいいから、毎日、忘れずに。(冷え性は)改善しました」。

ただし“やりすぎ”で反省も。「よく寝て、体にいいものを食べる。そして体を動かす」ことに努めていたところ、ベリーダンスにはまった。

「やりすぎちゃって、痩せすぎたので、今は運動をやめました」

ビルボードを終えると、6月からは2年前、コロナ禍で中止になった「ボーイ・フロム・オズ」の“再再再演”が控える。

「V6坂本君との舞台は、4回目再演が中止になっていたんですが、ようやくできます」

同公演は東急シアターオーブ(東京)で6月18日~7月3日、オリックス劇場(大阪)で7月14~16日の予定。その前に今ビルボードライブで、シャンソンの世界へ-。

「男役18年、女優18年となりました。私の女優、女がいかなるものか、生で見てもらえるとうれしいですね」