世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス、5月17日開幕)で最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に、是枝裕和監督(59)が手掛けた初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」の出品が決まった。14日に同映画祭事務局が発表した。コンペ部門への出品は、18年に同賞を受賞した「万引き家族」以来4年ぶり。

審査員賞を受賞した13年「そして父になる」も含め、同部門への出品は6回目だが、是枝監督は「6回目だからといって、うれしくないかと言ったらそんなことはありません」と喜んだ。フランスとの国際共同製作で海外での映画製作に初挑戦した19年「真実」に続き、2作目の国外での製作でコンペ部門出品が決まり「異国での、言語や文化の違いを超えた今回の共同作業を高く評価して頂けて、僕だけでなくスタッフ、キャスト皆が報われたとホッとしています」と語った。

子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていくことができる“赤ちゃんポスト”を巡り、出会っていく人たちを描いた物語は、是枝監督が長年温めてきたオリジナル企画だ。19年にパルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)にも主演したソン・ガンホ、09年のカンヌ映画祭ある視点部門出品作「空気人形」に主演し「次は人間の役で」と誓い合ったぺ・ドゥナ(42)ら韓国の俳優と出会い、製作につながった。

主演のソン・ガンホとのタッグで2度目のパルムドールに挑む是枝監督だが、昨今の世界情勢にも言及。「4年ぶりのカンヌ参加になりますが、コロナ禍だけではなく、世界が大きく揺れる時代に映画を作り続けること、そして、世界に届けることの意味を考える良い機会にしたいと思います」と語った。また、日本での公開も6月に決まった。

◆「ベイビー・ブローカー」 クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)と、赤ちゃんポストがある施設で働くドンス(カン・ドンウォン)の裏稼業はベイビー・ブローカーで土砂降りの晩、ソヨン(イ・ジウン)がポストに預けた赤ん坊を連れ去る。翌日、思い直したソヨンが赤ん坊不在に気づき警察に通報しようとすると「大切に育ててくれる家族を見つけようとした」と白状。あきれたソヨンだが成り行きで2人と養父母探しの旅に出る。尾行する刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)も追う。

◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京都生まれ。87年に早大第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加しドキュメンタリー番組の演出を中心に活動。95年、初監督作「幻の光」がベネチア映画祭金のオゼッラ賞を受賞。カンヌ映画祭出品は、01年「DISTANCE」のコンペ部門が初。04年は「誰も知らない」で柳楽優弥が史上最年少14歳で男優賞受賞。15年には「海街diary」をコンペ部門、「海よりもまだ深く」をある視点部門に出品。14年に制作者集団「分福」立ち上げ。