カンヌ映画祭監督賞を受賞した、1987年(昭62)「ベルリン・天使の詩」で知られる、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督(76)が最新作を東京・渋谷で撮影することが決まり11日、都内で会見を開いた。主演を役所広司(66)が務めることも、併せて発表された。

ヴェンダース監督は、世界的に活躍する16人の建築家やクリエイターがそれぞれの個性を発揮して、区内17カ所の公共トイレを新たなデザインで改修する、渋谷で2020年(平32)から行われているプロジェクト「THE TOKYO TOILET」のトイレを舞台に新作を作る。そのため、11年ぶりに来日し、シナリオハンティングなどを行っている。現在、決まっているのは、役所がトイレの清掃員を演じる、ということくらいだという。

役所は会見で、自身が演じる役どころについて「楽屋で大体、キャラクターを聞いて。365日、休まず1日3回、トイレを清掃する男」と説明。その上で「すごく美しい物語になる予感がしました。そこで働く人間、利用する人間たち…日本人というものを、何か、理解してもらえるような物語になるかなという予感がしました」と語った。一方、ヴェンダース監督は「(公衆トイレの)維持のためにはケアテイカーが必要であり、存在している。これからする仕事が、彼らに見合うものになれば」と語った。

質疑応答で、役所が演じる清掃員について、より深い内容を問う質問が出た。役所は「(トイレは)誰しも1日、何回も利用して、人間にとって欠かすことの出来ないもの。清潔で使いやすいものを要求する。でも、公衆トイレは汚かったり、におったり、ちょっと危険な場所だったり、壊れたりすると、どんどん使う人のマナーがエスカレートして、ますますダメになるイメージがある」とトイレについて語った。

その上で、演じる清掃員のイメージについて「初めて入って、汚れているのを見た時、どういう気持ちになるんだろう。なめるようにきれいにした後、トイレに入ってきた人間が、その美しさに、どういう気持ちになるんだろう」と、トイレの使用者までイメージした役作りの一端を明かした。さらに「1日3回、掃除する。汚れたものを掃除しますが、仕事だから清掃しているだけでは、ないのではないか? という気がしています」と続けた。

さらに「清掃するだけでないので、私生活も監督は考えてくださっている。どんなところ住み、好きな飲み物、音楽を聞きました。人物が、美しい人間という感じがした」とヴェンダース監督の描いた主人公像の一端を披露した。そして「ヴェンダース監督の作品…その日、その日に何を撮るか、どういうアクションになるか分からない。何とか監督についていきたい」と意気込んだ。

同じ質問に対し、ヴェンダース監督は「男性(役所が演じる清掃員)は、恐らく、こういう仕事をしているだけに、人間を愛していなければいけない。人間が好きでなければ、トイレを清掃する意味がない」と語った。その上で「人のためにサービスするのを愛し、他人にも献身的だと考えています」と続けた。