吉柳咲良(18)が22日、ミュージカル「ピーター・パン」のラストフライングへ向けて公演前通し稽古を行い、囲み取材に応じた。翌23日に開幕した東京公演は、吉柳ら複数の出演者が新型コロナウイルスに感染し、25日から8月2日までの全公演の中止が決定され、よもやの事態となってしまった。しかし、囲み取材では、13歳から演じ続けたピーター・パン卒業の本音を明かしてくれた。

17年から10代目ピーター・パンを演じてきた。1年目に東京・国際フォーラムに立ち、今年4年ぶりに同じ舞台に帰ってきた。「久々に戻ってきた感じはするんですけど、今は必死にただただ頑張っていくだけ。戻ってこられたことは、1年目もここだったので懐かしい気持ちになりながら『今年で最後』と実感してきています。頑張ろうという気持ちに改めてなりました」と意気込んでいた。

今年をもってピーター・パンの卒業を発表したが「もう来年、違う人がこの場所に立って、取材を受けたり空を飛んだり、ネバーランドの人たちと関わるのかと思うと、すごく嫌な気持ち」と笑った。「本当にそれくらい結局、私この場所が好きなんだなと思って…まだまだ私飛べるのにな」と本音を漏らした。

吉柳にとって同作は初めての仕事であり、とても思い入れがあった。「何度かピーター・パンを嫌いになったこともある。『なんでこんな意味のわからない少年の役をやっているんだ』とか、(観客に)届けられてるのかなとか、いろいろな気持ちを抱えながら、もう5回目と思うと早かった」と振り返った。

ここは吉柳にとって唯一、子どもでいることが許される場所だった。同作はフライングのシーンが有名だが、子どもたちのシーンも見どころだった。子どもたちが子どもで居続けることへのエネルギーがあふれていた。特に歌唱は、まだ声質の定まっていない子どもにしか出せない透明感を体現していた。2年連続フック船長役で共演した、小西遼生(40)も「この現場で(吉柳は)『子どもだ!』っていう感じが強い。ピーター・パンと吉柳の境目がわからない」と絶賛していた。

演出家の森新太郎氏も通し稽古前の取材では「一言で言うと、結構寂しいです。正直、来年もやればよいのにと思ってるんですけど」と率直な思いを伝えた。そして「まだまだ伸びる要素しかありませんし、大阪の大千秋楽まで、きらめきを見せてもらいたい。ラストフライングの寂しさを抱えた者にしか体現できないきらめきが今の彼女にはある」と期待を込めた。

「良い作品に関わるとすてきな人たちに出会える。私の中でも、心にとどめておきたい存在がピーター・パンだなと思う」と話していた。8月13、14日の大阪・梅田芸術劇場公演は開催予定。大阪での「ラストフライング」では有終の美を飾ってくれることだろう。【加藤理沙】