ウクライナ出身で、民族楽器バンドゥーラ演奏家のカテリーナ(36)が、NHKBSプレミアム「歌えるJ-POP 黄金のヒットパレード決定版」(24日午後9時放送)で、シンガー・ソングライター庄野真代と「翼をください」をコラボする。

1日も早くウクライナに平和が訪れることを祈るカテリーナは「一番許せないのは子供たちが殺されていること。何も罪のない子供たちが犠牲にあっている」と訴えた。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から7カ月。いまだにその戦火が止まない中、カテリーナは歌で平和を訴えた。

カテリーナはチェルノブイリ原子力発電所から2・5キロ離れた町、プリピャチに生まれた。「生後30日の時にチェルノブイリ原発事故に被災し、一家は町から強制退去させられた」と振り返る。6歳の時にチェルノブイリ原発で被災した子供たちで構成された音楽団「チェルボナカリーナ」に入団し、海外公演に多数参加してきた。

「何度もコンサートで来日する中で日本の素晴らしさに感動」したことから、19歳の時に音楽活動の拠点を東京に移し、地道なコンサート活動を繰り返してきた。

だが、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻で、状況は一変した。カテリーナは「たくさんの子どもや女性、お年寄りが殺されている」と母国の現状を語る。母親のマリヤさんは首都のキーウに1人で住んでいたが、3月にウクライナ脱出を決意。電車で11時間、ポーランドとの国境に近い西部のリヴィウに移動。その後、何時間も歩いて国境を越え、ポーランドの避難所に入ったが、日本政府がウクライナ人の受け入れを表明したことで、ワルシャワからロンドンを経て来日し、現在はカテリーナと暮らしている。

「どんな事情があっても独立国家に侵攻することは許してはならない」と訴えてきた、フォークシンガー松山千春が、バンドゥーラ演奏で全国を回るカテリーナを知り、自身の東京公演(5月12日、東京国際フォーラム)のステージに立たせた。客席からの大きな拍手に迎えられたカテリーナは、そこでバンドゥーラ演奏で「翼をください」を披露。大きな話題となった。

同曲は71年に赤い鳥が歌い、ヒットした。カテリーナは「日本の大好きな曲。千春さんと相談する中で選曲したが、ここまで話題にるとは…」

母親は日本に避難してきたが、2人の姉とその子どもらは今も現地にいる。「戦争はフェイクじゃない」。番組では「子どもたちのために、これ以上の事故は起きてほしくない。1日でも早くウクライナに平和が戻ってほしい」と、ウクライナの国花として知られる「ひまわり」をバックに、ウクライナに向けて庄野真代とのコラボで「翼をください」を熱唱した。

関係者によると、カテリーナは大みそかのNHK紅白歌合戦への出場もささやかれているという。NHKにとってもウクライナ問題は、今年の紅白でも避けられないテーマだからだ。別の関係者も「外せないアーティストの1人になるのでは」と話している。

しかも、65弦からなるバンドゥーラを日本で演奏できるのは、カテリーナを含めて、2人しかいないという。

カテリーナは「徐々に楽器が知られるようになって、日本でも関心を持つ人がでてきたのはうれしい。バンドゥーラと言う民族楽器が日本でも知られることで、これからもウクライナへの関心が高まってくれたらうれしいです」と語った。