深津絵里(49)が11日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた、新海誠監督(49)の最新アニメ映画「すずめの戸締まり」初日舞台あいさつに登壇した。「私は、初めて声優に挑戦しました。とっても怖かったです。だけど、新海監督が温かく、粘り強く導いてくださったおかげで、何とか完成することが出来たのかな思ってます」と声優初挑戦を終えた率直な思いを感慨深げに語った。

声優初挑戦で、苦悩も多かったという。深津は「思い通りに出来なくて、どん底まで落ち込んで…。でも、次の収録が待っているからなと、何とか気分を変えようと当てもなく街を歩き続けたり。新幹線に乗って京都のお寺で心を静めてみたりとか。本当に初めてのことに、この年齢でトライできるチャンスを与えていただいた監督に感謝申し上げたい」と新海監督に感謝した。

深津は劇中で、原菜乃華(19)が演じた主人公・岩戸鈴芽の叔母環を演じた。東北で震災孤児となった鈴芽を自らが住む宮崎に呼んで引き取り、愛情を持って育てる一方で、思春期の鈴芽とぶつかり合うと、自分の人生を犠牲にしたとも思い、心揺れるという役どころだ。さらに環自身、東北出身のため深津は2つの方言を覚えた上、宮崎から東北に旅していく鈴芽を追いかけていく中で、話し言葉も変化していくという難役だった。新海監督は「環は、とても難しい役。東北にルーツを持っていて、九州に移って、意図的に宮崎弁を身に着けた役。だから深津さんには宮崎弁から始まって、旅の途中で表現が変わっていくようなお芝居を要求した」と振り返った。

深津は、大分出身だが「声優が初挑戦で、普通に標準語をしゃべるだけでも、とっても難しいのに、さらに方言を2つ、マスターしなくてはいけない。すごく挑戦でした」と口にした。その上で「皆さんの足を引っ張らないようにという思いだけ。出演した声優の方が、付きっきりでトレーニングしてくれた先生のおかげで乗り越えられた」とアフレコを振り返った。

深津は、新海監督から「深津さんの方言の突き詰め方に驚いた。ここまでの(女優としての)キャリアを持って、アニメーションが初めて、というのも、とても意外だった。どうして出ていただけたのか、理由はあったんですか?」と尋ねられると「逆に、なぜ私と思われたんですか?」と質問を返した。同監督が「鈴芽は、東北から九州に行った震災孤児。環は、ある種、人生を犠牲にしたという後悔を抱きながら育てて(旅に出た)鈴芽を追いかけて言ってしまう。本音をぶつけ合う、ウソのない叫びを聞かせてもらわないと、キャラクターとして成立しにくいので、深津さんが頭に浮かんだ」と語る起用理由を、神妙な表情で聞き入った。

その上で、深津は「脚本やビデオコンテを見て…個人的な感想ですけれども、監督が次のところに向かおうとしているのかなと、何となく受け止めまして。日本国内のみならず世界中のファンに届くように作られていると思うけれど、今回は、その人だけに届けば良いというような、ピュアなものを感じた」と作品を評した。その上で「(声優の)経験のない私にやってもらいたいというのは何かあると思い、ヘタクソながら、ぶつかった。原さんは(主演として)背負わなければいけないという思いもあり、私より何万倍も怖いと思うけれど、戦っている姿が美しかった。素晴らしい感性の女優さんとお芝居できたのが、私の大きな宝物のような作品になってしまった」と、原との共演に喜びを感じたと語った。

原が「泣きそうなくらいうれしくて…。お芝居、環さんといる時の鈴芽は、他の人といる時と違う。深津さんのお芝居を見せていただき、自分の知らない鈴芽が出てきて感謝しかない」が声を震わせると、深津は笑みを浮かべた。さらに、原が「環のシーンのアフレコがない日に、深津さんがスタジオにいらして、のどにいいハチミツを頂いた。深津さんに頂いたハチミツだと…お守りのように。すごく温かく迎えていただいてうれしかった」と語ると、深津は「プライベートの話を…ありがとうございます」と照れ笑いを浮かべた。