女優の辻凪子(27)が主演、監督を務めた活弁付き新作無声映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」初日舞台あいさつが3日、東京・ポレポレ東中野で行われた。

辻は、長編映画初監督作品であり、新作無声映画という挑戦作ながら、満席となった客席が沸いたのを目の当たりにして「これが、自分のやりたかったことなんやなぁ」と感激し、涙した。

「I AM JAM ピザ-」は、活動写真と呼ばれた明治から昭和初期の無声映画に、弁士による語りと生演奏をつけた日本独自の文化「活弁」に感銘を受けた辻が監督、脚本、主演を務め、関西を拠点にする活動写真弁士の大森くみことタッグを組んだ、活弁ありきの新作無声映画。撮影が行われた京都で、11月25日から先行上映されていた。

この日は、大森が生の活弁を、ピアニストの天宮遥が生伴奏を担当する、活弁公演版を上映した。劇場は満席となり、大森の闊達(かったつ)な語りと雨宮の軽快な伴奏に加え、辻がシーンの合間に檀上に上がるなどのパフォーマンスもあり、笑いと拍手に沸いた。

上映後、辻は劇中の半袖、半ズボン姿で登壇し「寒いです」と本音を漏らしつつ「胸がいっぱいです」と言い、涙ながらにあいさつした。

辻 ごめんなさい。こんなに、たくさん…。(京都での先行上映含めて)初めて満席。数じゃないんですけど、こんなに、たくさんの人に見てもらって…笑い声が、すごい温かくて。これが、自分のやりたかったことなんやなぁと思って。ごめんなさい…ホンマニありがとうございます。

この日は、周防正行監督の19年の映画「カツベン!」で実技指導と時代考証を担当し、海外での活弁公演も積極的に行っている、活動写真弁士の片岡一郎も登壇。片岡は「この場でしか完成し得ないものじゃないか。今、新作でやっていますが10~20年になって、弁士は年を取りますが、中の人は年を取らない」と「I AM JAM-」を評した。その上で「日本で4DXが普及しないのは、映画が出て行こうとするから。映画は、我々が入って行かないと面白くない。(『I AM JAM-』は)変化していくのが楽しみな映画」と絶賛した。

辻は「私は、逆に活弁の力を借りなきゃ、こんなに面白い作品は出来なかった。(監督として)ペーペーの映画を、広い心で受け入れてくれた」と活動写真弁士の2人に感謝した。その上で「今日は、赤ちゃんも見てくれた。子どもから大人まで、しっかり見てくれてうれしかった。(『I AM JAM-』が世の中で広く)知られるため、届けるのを頑張ります」と客席に向かって誓った。【村上幸将】

◆辻凪子(つじ・なぎこ)1995年(平7)9月1日、大阪府生まれ。幼い頃から英国のコメディー「MR.ビーン」に憧れ、コメディエンヌを目指し女優の道へ。京都芸術大映画学科卒業後も、年に1本はオリジナル映画を製作するなど映画監督としても活動中。同大3年時には、初監督作品「ゆれてますけど。」が英国のクリスタルパレス映画祭で入選。自身の体験を下に、大学の同期の阪元裕吾監督と共同監督を務めた17年「ぱん。」は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞。間寛平が座長を務める「劇団間座」にも所属。NHK連続テレビ小説には、17年「わろてんか」、19年「スカーレット」、20年「おちょやん」に出演。テレビ東京系で7月期に放送された「晩酌の流儀」にも出演など舞台、映画、ドラマと幅広い活動を続けている。

◆「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」 毎日、アルバイトに明け暮れるジャム(辻)の夢は世界一のコメディエンヌになること。そんなある日、ジャムに全銀河系の運命が託される。間寛平やドランクドラゴン塚地武雅らも出演。