落語家三遊亭とむ(38)が、6日に会見して、来年7月1日に真打ち昇進、錦笑亭満堂と改名することを発表した。

ピン芸人の末高斗夢時代からの“番記者”としては、いの一番にかけつけなくてはいけないのだが、その前のインタビュー取材が押して、タクシーでギリギリに駆けつけた。途中、事務所関係者から確認の電話もあったのだが、平静を装って会見が始まったところに到着した。

「真打ちは最後に上がるからな」と、亡き立川談志さんが1971年(昭46)の参議院選で最後に最下位で当選したときに発した名言をパクってごまかしたが、反応してくれたのはごくわずか。昭和は遠くになりにけり。

で、三遊亭とむだ。15年位前にお笑いライブの打ち上げで一緒になり、築地の社まで来てもらって取材した。げたとお玉をくっつけて「おったまげ~」、炊飯器を五つつなげて「ゴレンジャー」(5連ジャー)、大きなボンドを持って「大木凡人~」と駄じゃれ連発だった。

その後、ピン芸人生活に行き詰まり、春風亭小朝師匠の紹介で、三遊亭好楽師匠に入門。最初は“素で出来る”与太郎と若旦那以外は聞いてられなかった落語も上達して、あとはいつ真打ちになるのを楽しみにしていた。

真打ち発表会見で、好楽師匠が「とむは誰にでもかわいがられる。これは才能。持っている男なんです」と話していたが、まさしくその通りとうなずいた。真打ちになれば弟子が取れる。顔を合わす度に弟子入り志願して「高座名は三遊亭ガムか三遊亭ゴム。かわいい妹弟子の三遊亭ラムちゃんをスカウトに行きたい」などと与太を飛ばしていた。

それが、まさかの錦笑亭満堂。どうしたものかと悩んでいたら、三遊亭とむ本人から会見取材の礼の電話が入った。“三遊亭ラム問題”を相談したら「ならば三遊亭の亭号のままで」とありがたいお言葉をいただいた。

その電話の直前に同僚と話していたのだが、あるタレント本人から、掲載した写真のことで直接のクレーム電話を受けたという。愚痴をこぼす同僚に「いいじゃないの。大物から直接、電話もらえるんだから。俺なんて、電話くるの三遊亭とむくらいだよ」と冗談まじりに慰めた。次の瞬間のとむからのラブコール。それをネタに、また会話の花が開き、笑いが広がった。持っている男、三遊亭とむの錦笑亭満堂としての成功を祈っている。【小谷野俊哉】