「松竹ヌーベルバーグ」の旗手として活躍した映画監督の吉田喜重(よしだ・よししげ)さんが8日午前8時33分、肺炎のため都内の病院で死去した。

89歳。福井市出身。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は妻で女優の岡田茉莉子(89)。

岡田は日刊スポーツの取材に応じ、吉田さんは最近まで体調に異変はなく、訃報は「突然でした」と説明。60年以上の間、夫婦、女優と監督としてともに歩んできた吉田さんに向けて「本当に彼は才能のある人で、すばらしい監督でした」と言葉を贈った。お別れの会の開催などは今後、検討するという。

吉田監督は、松竹大船撮影所で木下恵介監督らに師事し、60年監督デビュー。「秋津温泉」「日本脱出」などを手がけ、大島渚監督、篠田正浩監督らとともに「松竹ヌーベルバーグ」と呼ばれた。

「秋津温泉」が100本目の映画となった岡田とこの映画をきっかけに、64年に結婚。松竹を退社して現代映画社を設立し「エロス+虐殺」「戒厳令」などを発表した。「人間の約束」で芸術選奨文部大臣賞。「鏡の女たち」が02年のカンヌ国際映画祭で特別招待作品に選ばれた。03年フランス政府から芸術文芸勲章オフィシエ章を受けた。