松山ケンイチ(37)が2日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「ロストケア」(前田哲監督、3月24日公開)完成披露舞台あいさつに出席した。

13年に出版された、葉真中顕氏の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を映画化するため、約10年、プロデューサー的に動きながら、この日、観客と一緒に初めて試写を見たという。

「ロストケア」は、早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見され、捜査線上に浮かんだセンターで働き介護家族に慕われる献身的な介護士・斯波宗典(松山)と、介護家族の厳しい現実を知り、法の名のもとに斯波を追い詰める検事・大友秀美の緊迫の戦いを描く。

松山は「反応が見たくて、お客さんと見ていました。つまらないとあたまが動く…監視していたんですよ」と観客と試写を鑑賞。「(斯波の父正作を演じた)柄本明さんの、いっぱいの芝居で(観客の)はなをすする声が聞こえた。自分の感動する部分と一緒。皆さんの空気感の中で見られて、僕も感動した」と振り返った。

前田哲監督は「10年前に小説を読んで…そうしたら松山さんから電話がきた。『こんな、おもしろい小説がある』と言ったら『読む』と言って」と、10年前に原作と出会い、松山と意気投合したエピソードを明かした。

松山と初共演で、大友を演じた長澤まさみ(35)は「この作品を映画にしたいという思いを持って、動かれていた。プロデューサー的だった」と、この作品における松山を評し「(試写は)自分反省会的に見るので冷静に見られない。自分のいないシーンで、身につまされる思いをした。見るべき映画、見て欲しい映画と思いながら試写を見た」と、作品の感想を語った。

松山は、この日、初めて作品を見たことに話が及ぶと「初めて見た? そうですね。何て言うんですか…どういう作品になるかという俳優的な目線より、お客さんがどう反応するか見たかった」。さらに「なぜ、10年もやりたかったのか…それは自分事になりうるから。皆さんの目の前に現れる問題になり得るから、まず共有したかった」と、介護の問題を描いた映画の意義を語った。その上で「(客に)伝わったと思うし。日本は平和だと言われているけれど、介護だけじゃなく日本には穴があり、そこに落ちる可能性がある。見たいもの、見たくないものと区別すると見なくて良い…でも、まず共有し、知ってもらいたいと思う」と熱く訴えた。

舞台あいさつには、鈴鹿央士(23)戸田菜穂(48)加藤菜津(30)葉真中顕氏も登壇した。