松山ケンイチ(37)と長澤まさみ(35)が2日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた、初共演作となった映画「ロストケア」(前田哲監督、3月24日公開)完成披露舞台あいさつに登壇した。松山は「まーちゃん」、長澤は「けんちゃん」と互いを呼び合いながら、撮影現場では全く口をきかなかったことを、前田哲監督から暴露された。そのことに関し、長澤が“俳優としての流儀”を熱く語る一幕があった。

劇中で、松山は早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された事件の捜査線上に浮かんだ、センターで働く介護士・斯波宗典を、長澤は介護家族の厳しい現実を知る検事・大友秀美を演じた。大友は法の名のもとに斯波を追い詰める物語で、2人は対峙(たいじ)する役どころだった。

ただ、この日の檀上で、松山は長澤を「まーちゃん」、長澤は松山を「けんちゃん」と呼んだ。介護殺人がテーマの作品の試写を見た観客との質疑応答も行われ、俳優陣に介護を描いた作品を見て、受け取って欲しいことを問う質問が出た。長澤は「私も普段からしていますが、家族と自分たちの将来を両親と話し合う。自分がどう過ごしたいとか…将来の夢を語るのと同じように、自分の生涯のことを話し合うのは、すごく重要。家族、兄弟、友だちと話し合ったり、言葉にして、こんなふうにしたいよねとディスカッションしていくのが重要。映画の感じたところの感想を述べるところから初めて欲しい」と熱っぽく語った。

すると、松山が「僕も、まーちゃんと、ほんと、一緒のこと思っていた」と同意した。長澤が「けんちゃんも、そう思っていた?」と返すと、松山は「思っていました。(介護は)備えがどうしても必要。いざ、そうなってから、どうするんだ、じゃ遅い。いろいろなセーフティーネットも、当てはまるかどうかを、早め、早めにやっていかないと対処しきれない大きな問題」と語った。そして「(演じた)斯波が、どうやったら殺さなくて済んだかを考えるんですよ。孤立、孤独にさせないのが大事」と訴えた。

そんな2人を横目に、前田監督は「2人のやりとりを見て、現場でスタッフが震えていた。現場では、役作りで距離を置いて、全く話していない。今は仲良しですけど」と突っ込んだ。松山が「その情報、いらなくない? まーちゃん、けんちゃんで、いいじゃん」と切り返すと、長澤も「今日は、そんな(気軽にやりとりする)感じ」と続いた。

初共演の思いについて質問が及ぶと、長澤は「相手が重要。信頼感が芝居には重要。お仕事はしたことがないんですけど、一視聴者として松山さんの作品を見てきて、どういう俳優かを自分なりに感じているものがあった。きっと一緒に進んでいける、大丈夫と思った」と松山を評し、初共演至るまでの心中を明かした。

現場で会話しなかったことについて「ここで、しゃべらなければいいな、というプランがあった。会話をせず、相手のことを知らず、気を使わずに向き合えたら幸せ…大丈夫だなと。松山さんも、同じように思っていたようで(現場で)お互いが言葉にすることはなかったんですけど」と語った。そして「俳優業って言葉じゃなく伝わるものが現場にあって。化学変化、お互いのぶつかり合い…その時にしかない、生のものでもある。現場で日々、積み重ねていくことが出来た。とてもいい時間だったし、松山さんがいないと演じることが出来なかった」と松山に感謝した。

松山は「僕も、まーちゃんと同じ」と言いつつ、共演の鈴鹿央士(23)に現場での感想を振った。鈴鹿は「お芝居、しなきゃいけないのに(2人の芝居に)見入っちゃって、圧倒されて…パソコンを打つのを忘れた。自分、もっと頑張れよと」と感想を語った。そして長澤に「僕が聞きたいことがたくさんあって、しゃべりかけてしまったのは今、謝っていいでしょうか」と現場で話しかけたことを謝罪した。長澤は「それは大丈夫。信頼感も重要なんで…雑談も重要」とフォローしていた。