KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務める俳優で演出家の長塚圭史(47)が7日、同劇場で会見し、2023年度の上演ラインアップを発表した。

21年に芸術監督に就任した長塚は「22年は、まだコロナとにらみ合いの年でありました。僕らも何があっても冷静に対処する”筋肉”がついてきた。劇場というものは、さまざまな社会を受け入れ、創造を育み、魅力を伝えていかなくてはいけない」と話して、23年度のシーズンテーマを「貌(かたち)」と発表した。

23年度の上演作品について、長塚は「3つの柱があります。1つめは4月から夏までをプレシーズンとして、さまざまな実験的な作品を上演する。夏にはキッズプログラムをやります。9月からはシーズンタイトルを設けて、3月までやっていく。シーズン制を敷くことで、劇場にリズム感を出したい」と話した。

そして「もう1つは劇場を開いていく。ただ待って、作品を上映するだけではなく、機関紙、フレンドシッププログラムなどで広めていく」。

3つめとして「カイハツプロジェクト」を挙げた。「作品を上演するだけでなく、創造を育てる。人材育成も大事だと思います」と説明した。

長塚自身は9月にアーサー・ミラー作「アメリカの時計」を演出、24年2~3月に「箱根山の美女と野獣」「三浦半島の人魚姫」を作・演出する。

「『アメリカの-』は大恐慌の時代を舞台に、築き上げたものが崩れていくさまを描く。50人以上の登場人物がいるんですが、13人の俳優でやります。ぜひ、楽しみにしていてください」。

「箱根山の美女と野獣」「三浦半島の人魚姫」は、広く知られた「美女と野獣」「人魚姫」を神奈川県内を舞台にして上演。「この劇場だけでなく、県内5カ所でも上演します。私も出演して、お客さまと対話の時間を持てたらいいな、と。会えるのが楽しみです」と話した。

長塚は21年度に5年間の任期で芸術監督に就任した。「KAATの芸術監督としては、劇場という文化が、まだ多くの皆さまに届いていないと感じています。劇場というのが街に必要だと思われるように、演劇というものの魅力を伝えていきたい。住んでいる人が自分たちの街の文化なんだと思えるように、劇場にどういう魅力があるかを発信していく事の大切さを感じています。自分の25年度までの任期の中で、何か視界が開けるようにと考えていきたいと思っています」と話した。

眞野純館長は「コロナ禍の3年がありました。終息が近づいたとは言え、まだまだ不透明感が漂う。ようやく、私たちの活動も活性化出来るかのようになっているかと思います。長塚監督になってから2年、作品を作り、継続させることがまずは手段だとやって来た。この3年間、コロナ禍の中でいろいろな問題が浮かび上がってきました。今年は、とても大事な年にあたると考えています。この2年間、長塚監督が実現しようとしたことを、あらためて実現を図っていけたら。さらなる飛躍の年、これがターニングポイント。私たちが変われるか、変われないかのとても大事な年だろうと思う」と話した。