神木隆之介(29)主演の23年度前期NHK連続テレビ小説「らんまん」の初週試写が先日、東京・渋谷の同局で行われた。「植物学の父」と言われる牧野富太郎博士の人生をモデルにした作品だけに、作中では花や自然の表現に力を入れている。

第1週のタイトルは「バイカオウレン」で、牧野博士が好んだ花の名前が付けられている。もちろん、バイカオウレンはその週の重要アイテムとして登場するが、同作で取り上げる草花は全てレプリカで精巧に作ったものという。

試写後の会見に出席した制作統括の松川博敬チーフ・プロデューサー(CP)は、生ものである草花の扱いの難しさについて質問を受けると「それを聞いていただきたくて。今まで牧野富太郎さんを(題材に)扱わなかった理由が痛切に分かる」と実感のこもったコメント。博物館などに展示するレプリカ品を手がける京都のメーカー、西尾製作所とタッグを組んで花の制作に取り組み、「写真から作ることができないので、実物を取り寄せて各パーツの型を取って、それぞれ作ったものをつなぎ合わせています」と説明した。扱う花の咲く時期も関係するだけに「事前に計画しておかないと、その季節を逃してしまう。花を事前に取って、型だけ取っておく。非常に難しいところです」と語った。

実際に、劇中で見たバイカオウレンは本物と見まがうほどで、主人公の万太郎(子役の森優理斗)が根を切らないようにそっと花を引き抜くシーンもリアリティーがあった。根っこについた土の感じも本物的で、今後ドラマでさまざまな草花を見るのが楽しみになるような出来栄えだった。

物語冒頭に登場する高知・安芸市の名所、伊尾木洞も、ジブリ映画「もののけ姫」のシシ神が歩いていそうな神秘的な世界観で見応えがあった。松川CPによると、伊尾木洞の場面は短いながらも「冒頭のシーンなので大事に」と、約6時間かけて撮影。神秘的な森の様子は「見るマイナスイオン」といった雰囲気だが、伊尾木洞に限らず本作のロケは自然豊かなところが多いそうで「山や川ばかりで、足場が良かったことがない」とこぼしたのも記憶に残った。

ちなみに第1週の「バイカオウレン」に続き、第2週は「キンセイラン」、第3週は「ジョウロウホトトギス」と、各週のサブタイトルには物語内で描かれる花の名前が付けられるという。「その花がキーになる物語の構成にして頑張ってますが…毎週花を選ぶのもなかなか大変なんです」と苦笑した。自然のリアリティーとともに、制作陣が知恵を絞るサブタイトルにも注目したい。【遠藤尚子】