歌舞伎俳優市川猿之助(47)が18日に東京・目黒区の自宅で両親とともに倒れ、両親が亡くなったことについて24日、警視庁が都内の警察施設で猿之助から再び事情を聴いていることが捜査関係者への取材で分かった。この日から正式な任意聴取が始まったという。

猿之助は、歌舞伎俳優で父市川段四郎さん(76)母喜熨斗延子さん(75)が亡くなった経緯について、搬送された18日以降、警視庁に「前日に死んで生まれ変わろうと家族で話し、両親が睡眠薬を飲んだ」という趣旨の説明をしていた。司法解剖の結果、両親は向精神薬中毒で亡くなった疑いがあり、猿之助も薬物中毒の形跡があり、倒れる前に何らかの薬物を飲んだ疑いがある。

警視庁は一家心中を図ろうとしたとみているが、猿之助の説明や状況について慎重に調べを進めているとみられる。これまでの自宅の現場検証や家宅捜索では、関連する薬物や容器は確認されなかった。猿之助は搬送先の病院を19日に退院後、都内の別の病院に転院。体調も少しずつ回復してきたとみられ、この日から、正式な任意聴取が始まったという。

また「週刊文春」はこの日、「文春オンライン」で、猿之助が病院で処方してもらった睡眠導入剤を両親に渡し、それぞれが飲んで意識を失ったところにビニールをかぶせたと報じた。

猿之助をめぐっては、18日発売の週刊誌「女性セブン」が性加害やハラスメント疑惑を報じ、所属事務所「ケイファクトリー」は「複数のマネジャーに聞き取りをしましたところ、弊社管轄の現場において、そのような事実は現在出てきておりません」とコメントしている。

松竹は猿之助の状況を鑑み、「六月大歌舞伎」(東京・歌舞伎座、6月3日初日)の休演と配役変更を発表した。公式サイトには「現時点におきまして来月の公演に出演することは困難と判断し、本日の発表内容を決定いたしました」と書かれた文書が掲載された。出演予定だった「七月大歌舞伎」については、改めて告知するとした。

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元東京地検特捜部副部長・若狭勝弁護士は、「週刊文春」での報道が事実であれば、自殺ほう助罪よりも、承諾殺人罪(同意殺人罪)に傾くのではと指摘した。

「猿之助さんの積極的な関わりがみられます。自殺ほう助罪と同意殺人罪はいずれも、亡くなった人に自殺の意思があることを前提としていますが、誰が企図し積極的に関わったかということが違います」と解説した。

本人があらかじめ用意していた薬を、飲みやすくしてあげる-などの手助けであれば自殺ほう助罪、薬を用意し渡す-ということになると同意殺人罪になるという。「どちらも法定刑は懲役6月以上7年未満ですが、同意殺人罪の方に傾くと、(法定刑の範囲で)重くなる可能性もあります」とした。

また、自分に処方された向精神薬を両親に渡したのであれば、麻薬及び向精神薬取締法違反に問われることも考えられるという。

今後の捜査について若狭氏は「警察は『家族会議をして、死んで生まれ変わろうと話し合った』などという証言については、さらに調べを進めると思います。とってつけたような荒唐無稽な話ですから、もっとアナログで自然な形の話を聞くことが今後の捜査のポイントになってくると思います」と指摘した。