ジャニーズ事務所の元所属タレントがジャニー喜多川前社長(19年に死去)からの性加害を訴えている問題を受け、同事務所が26日、対応策を発表した。WBC侍ジャパンのヘッドコーチ白井一幸氏ら3人の「社外取締役の就任」、「心のケア相談窓口の開設」、「外部専門家による再発防止特別チームの設置」の3点を報告した。

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同事務所はまず「声を上げられたかどうかにかかわらず、所属経験のあるすべてのタレントへの心のケアが最重要と考えております」とし、相談窓口を5月31日に開設すると発表。「この窓口では完全にプライバシーに配慮した形で心療内科医・公認心理師がご相談者それぞれの心の問題に対応し、できる限りのケアを行います」とした。元衆議院委員で環境相などを歴任した心療内科医の鴨下一郎氏が監修するという。

また「今回の問題は、弊社におけるガバナンス上の課題を浮き彫りにしたものであると考えております」とし、事務所に対する提言を行う「外部専門家による再発防止特別チーム」の組成も伝えた。元検事総長で弁護士の林眞琴氏、精神科医の飛鳥井望氏、臨床心理の研究者(氏名非公表)の3人という。

さらに「コンプライアンス遵守、再発防止策の確実な遂行を含めた経営体制の改善と強化」に向けて、3人の社外取締役を明らかにした。元財務省、元環境省で環境事務次官も務めた中井徳太郎氏、元プロ野球選手で、今年3月のWBCで世界一になった侍ジャパンのヘッドコーチだった白井氏、第二東京弁護士会副会長としてハラスメント相談員・調査委員を担当した藤井麻莉氏。7月1日付で就任する予定という。

今年3月に英BBCがジャニー氏の性加害問題を扱うドキュメンタリー番組を放送。先月、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさん(26)が会見を行い、ジャニー氏からの性被害を訴えた。ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長は今月14日、動画や書面で謝罪し、再発防止策の設定や、経営体制の抜本的に見直しなどを発表していた。

ジュリー氏は性加害について「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」としていた。長らくジャニーズ事務所では叔父のジャニー氏と母の藤島メリー泰子氏(21年に死去)の2人が全権を握っていたとし「その異常性に違和感を持つことができなかったわけで、ただただ情けなく、深く後悔しております」と伝えていた。

<性加害問題最近の経緯>

▼5月14日 ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪する動画と文書を公開。

▼同16日 立憲民主党が国会内でカウアン・オカモトさんと橋田康さんにヒアリング。

▼同17日 斎藤健法相が衆院法務委員会で「一般論として性犯罪は悪質重大な犯罪で厳正に対処すべき」と発言。

▼同日 カウアン・オカモトさんがパニック障害再発による休養を発表。

▼同19日 21年4月までジャニーズ事務所に所属した近藤真彦が「うそはなしに、正々堂々と話をしてもらえれば」などと発言。

▼同21日 ジャニーズ最年長タレント東山紀之が番組で「ジャニーズという名前を存続させるべきなのかを含め、外部の方とともに全てを新しくし、透明性をもってこの問題に取り組んでいかなければならない」などと発言し謝罪。

 

◆白井一幸(しらい・かずゆき)1961年(昭36)6月7日、香川県志度町(現さぬき市)生まれ。志度商-駒大を経て83年ドラフト1位で日本ハム入団。87年ベストナイン、ゴールデングラブ賞。96年の引退後は、日本ハムやDeNAでコーチなどを歴任。20年には北海道銀行女子カーリングチーム「フォルティウス」、21年Bリーグ「レバンガ北海道」メンタルコーチに就任。

◆藤井麻莉(ふじい・まり)氏 男女共同参画の専門家として、ハラスメント領域で豊富な対応経験を持つ。企業法務全般を取り扱う。

◆中井徳太郎(なかい・とくたろう)氏 85年大蔵省(現財務省)入省し11年環境省に異動。日本製鉄株式会社顧問。さまざまな社会改革を提言してきた。

◆林眞琴(はやし・まこと)氏 東大法学部卒。東京地検特捜部検事、法務省刑事局長など数々の要職を歴任。リクルート事件の捜査にも関わった。

◆鴨下一郎(かもした・いちろう)氏 厚生労働副大臣など歴任。社会保障分野で数多くの政策課題に取り組む。医療現場で心の病気に向き合い続けてきた。

◆飛鳥井望(あすかい・のぞむ)氏 現在、公益社団法人全国被害者支援ネットワーク理事、公益社団法人被害者支援都民センター理事長などを務める。