先日、女優筒井真理子(62)主演の映画「波紋」(荻上直子監督)プレミア上映会を取材した。筒井や共演した木野花(75)キムラ緑子(61)から、主人公・須藤依子の息子役を演じた磯村勇斗(30)へ贈られた金言が印象的だった。

磯村はベテラン女優陣に挟まれての登壇にソワソワしている様子で、舞台袖でも「皆さんが盛り上がっていて、そのお話の中に入れなかった」と苦笑い。一方で、キムラや木野は磯村の演技を「すてきな方だと思った」「将来を期待しちゃいました」と絶賛し、磯村は「背中に汗が…」と恐縮しつつ、喜んでいた。

同作は監督自身が歴代最高の脚本と自負する絶望エンターテインメント。作品にちなみ、この日は絶望の対処法を出演者が明かした。筒井は「眠ってしまうのが一番。でも朝でも引きずっていたら、布団の中で叫んで箱根に行って日帰り温泉」と回答した。

木野は「ストレスを抱えたときに自分にかける呪文があるんですよ。『なるようにしかならない!』というの。野望や野心を持っちゃうと、それが手に入らないときにがっかりする。自分の思うようにならないから絶望するでしょ。なるようになると思えば絶望なんてない!」と金言を送っていたが、女性陣の対処法トークがヒートアップするほど、磯村は徐々にステージ後方に下がりながら「セミナーみたい」と熱弁に聞き入っていた。

20年ほど前に絶望を味わったというキムラも「己が悪いと自分を責め続けて、究極の孤独を味わって。天上にいつも謝っていました。9年くらいかけて徐々に忘れてやっと今の私になった」と話すと、磯村は「もうこれ以上はないでしょう。自分の絶望なんてちっぽけだなって思いますね。まだ人生経験浅いな、まだこんなところで話すことじゃない、先輩方がすごすぎて…」とこぼし、会場も笑いに包まれていた。

木野は磯村に「これからですよ、良い絶望を味わってください。絶望って悪くないよ、1回か2回みんなきつい目に合ってさ、だって若いって傲慢(ごうまん)なんだから」とエールを送り、磯村もうなずいていた。磯村と年の近い記者も木野の金言に納得した。

また、同作の中で主人公・依子の元に突然失踪した夫が帰ってきたことについては、家に入れる派と入れない派で意見が分かれ、磯村は「自分のことじゃないけど、すごく心が苦しくなります」と苦笑い。木野は「私は全くもってダメですね。出て行かれた男が家に来たって『じゃあ、お引き取り願って』という感じ」と笑わせ、続けて「本当に家を出るときは気を付けた方が良いよ! 敷居は踏めないからね!」とアドバイスしていた。

同作を観るファンへ磯村は「男性が見る目線と女性が見る目線で全然違うんだろうなと。僕は男性目線なので、女性って恐ろしいなって思うところもあればそこがおもしろくもあるので、ぜひ観てもらいたいです」とアピールしつつ、先輩女優の熱量に最後までソワソワ。他の舞台あいさつなどでは見られない姿だった。【加藤理沙】