大沢たかお(55)が、主演しプロデューサーを務めた映画「沈黙の艦隊」(吉野耕平監督、29日公開)の撮影を行った、広島県呉市の海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」を、このほど玉木宏(43)とともに訪問し、完成を報告した。

現役の自衛官から演技、劇中に登場する潜水艦のセット含め「完璧」と直にお墨付きをもらい「一緒に作った作品。製作者の1人と思って見てもらいたい」と共闘を呼びかけた。

てつのくじら館は、実際に任務を遂行した潜水艦「あきしお」を展示する日本唯一の施設で、撮影は一般には非公開のエリアで行われた。大沢と玉木は、あきしおを見学後、同館の一室に集まった海上自衛隊呉地方総監部をはじめとした、50人の自衛官と懇談した。

大沢は撮影前の昨夏に役作りのため、呉市の隣の江田島市にある海上自衛隊幹部候補生学校を訪問した当時を振り返った。午前6時の総員起床前から1日を見学する予定が、ユニホームが用意され、訓練を受けて所作を学んだ。「機敏な動き、緊張感…俳優業は日常で、そこまで緊張しない。規律、思いを感じた」。一連の学びが、原子力潜水艦に核ミサイルを積み、反乱逃亡する海江田四郎艦長を演じる際の「コアになった」と感謝した。

核の問題に踏み込んだ映画であること、製作に協力した呉が原爆が投下された広島県の1つの市であることへの思いが公開前の電撃訪問につながった。「歴史的にも意味がある場所であると同時に、協力していただいた記憶もある。玉木君にも来てもらったのは、広島に来るのを避けては通れないという特別な思いがあったから」。そして「実世界で起きたら大変な問題を、エンターテインメントで出来るギリギリまでタブーを無視して作ることで、観客も巻き込み、考えるきっかけを作るのが我々の役目」と作品の意義を訴えた。【村上幸将】

○…玉木は格闘技の練習にも励んでおり、今月初めに米で開催されたブラジリアン柔術の世界大会「ワールドマスター」に青帯マスター3(41歳以上)フェザー級で出場し、1回戦を突破したことが話題になったばかり。自衛官から勝利を祝福され「まさか広島に来て柔術の話をするとは」と照れ笑いを浮かべた。そして「15年やったボクシングは試合に出たことはなかった。4年前からやった柔術は、挑戦することで見える世界があると思った。仕事でないところで真剣に取り組むことで精神力を鍛えられる一面があり、一生懸命やっています」と語った。

◆「沈黙の艦隊」 かわぐちかいじ氏が、88年から96年まで「モーニング」に連載した同名漫画を実写化。日本近海で海自の潜水艦が沈没し、海江田四郎艦長(大沢)ら全76人が死亡と報じられたが、日米両政府が極秘に建造したシーバットに乗務させるための偽装工作だった。艦長に任命された海江田は逃亡し、自らを国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を宣言する。Amazonプライムビデオが日本国内で映像制作を始め、5年で初めて劇場版映画を製作。ユースケ・サンタマリア、中村蒼、中村倫也、水川あさみ、夏川結衣、江口洋介らが出演。